自分で撮影した写真や動画が、”何かつまらない”と感じる場合、その原因の大半が「立体感」の表現不足にあります。
空間を表現する「奥行き=depth」と言い換えることもできますが、没頭できる良い写真や動画には、その場の空気を伝える奥行きが存在し、自分がそこに居るかのような錯覚すら感じさせます。
それをどうやって行うのか?
この記事では、奥行きを表現する上で有効な撮影方法を8つご紹介します。
ただし、8つの方法を無作為に取り入れても大きな効果を生むことはありません。
重要なのは、それぞれの奥行き表現が視聴者に与える心理的な効果であり、そこが合致して初めて視聴者の感情を動かす作品となります。
特に映像作品の場合は、テーマやストーリーがあるはずなので、狙い通りの効果を生む必要があります。
それぞれのテクニックと合わせて、どういう心理効果があるのかにも触れていきますので、セットで覚えて頂くと良いです。
ちなみに今回ご紹介するテクニックは、スマホでの撮影にも有効ですので、是非身近な被写体で試してみて下さい。
写真や動画に奥行きを与える方法8選
写真や動画に奥行きを与えるテクニックというのは、やってるうちに勝手に身に付くものではなく、狙って撮影して、その結果が良かったという経験を経て初めて身に付くものです。
良い作品のほとんどが、複数のテクニックを組み合わせて奥行きを表現していますが、最初は引き出しを増やす為に、得意パターンを一つだけでも見つけて頂く事が大事です。
なお、この記事では固定構図(フィックス)が面白い、海外ドラマの「ブレイキングバッド」を題材に進めていきたいと思います!
1.リーディングライン(放射線)
奥行きを加える最も簡単な方法は、リーディングラインの使用です。
被写体に注意を引くのにも役立ちますし、手前から奥に向かって収束する線は距離表現する際にもってこい方法です。
また、線は直線である必要はなく、例えば蛇行した道がその先の建物に繋がっていたとしても、距離感を得られますし、何よりも精神的な効果で「距離」を感じられる為、奥行きの表現としてマストです。
画像は、高校教師のウォルターが、洗車場のバイトを続ける事にウンザリしているシーンで、出口が見えない絶望感を表現しています。
実際に出口を一番奥に配置して、距離を感じさせています。
2.フレーミング
フレーミングとは、写真や動画のフレーム内に、更にフレームを作る事で奥行き感を高める手段として機能します。
前景にフレームが配置されている分、主要な被写体は比較的小さくなることで、立体感が生まれます。
さらに、フレームは、視聴者がその場にいるかのように感じさせるのにも役立ちます。
画像は、日常的な口喧嘩のシーンですが、フレームが存在する事で、目の前で寸劇を見ているぐらいの近しい気持ちで見ることが出来ます。
3.視点
撮影する視点によって、ショットの立体感が変わります。
目線の高さから見下ろして撮影すると取り込めない情報も、このキャプチャのようにグラウンドレベル(ローアングル)で撮影することにより、手前のバケツや、背後の作業員、一番奥の天井を取り込むことが可能になりますので、空間を認識しやすくなります。
主に前景に注目させる場合に使われるテクニックです。
画像は、地面に這いつくばって、教子の高級車を洗車しているという無様な様子を一つのフレーム内に綺麗に収めており、更にグラウンドレベルで撮ることにより、他の作業員との位置関係もわかりやすいショットです。
4.前景、中景、背景を意識する
特に風景を撮影している場合、画像には前景、中景、背景の要素が含まれます。
そして、これら3つのレイヤーをリンクさせることで、ショットを通して見る人の目を動かしやすくなります。
つまり、前景は視聴者の目を内側に引き込み、次に中央の要素 (メインになることが多い) に導き、そこから、背景につながるといった具合に、見る者に視線を移動させるため、奥行き感を与えるのに役立ちます。
どのテクニックにおいても言えることですが、技術的に立体的に見せるより、心理的にそう感じさせる方法が多く使われます。
画像は、人目につかない高野に着いたところですが、この後真ん中の岩場からジェシーが現れるので、”手前から順”を演出にも反映させたシーンです。
5.色
配色を工夫することで、背景色と被写体色のコントラストを美しく表現することができます。
被写体と背景が同系色の場合、どうしても退屈なイメージになりがちですし、境界線がわかりにくいと、平坦なイメージになります。
もちろん狙ってそういったショットを撮る場合もありますが、その場合は何か他の目立たせたい要素に意識を全部振る場合なのかと思います。
フレーム内に色が多いと、それぞれの色が放つ輝度や彩度のパターンが単純に増えますので、立体感を感じやすくなります。
衣装や小物選びも大切ということですね!
6.影
恐らくこれが一番しっくり来る内容かと思いますが、3次元の物体には影があります。
人はその影を認識することで、被写体の形や厚みや感じ取っていますので、影のない被写体を「平ら」と感じてしまいます。
なので、撮影時は影(光)をどう扱うかが重要になります。
この画像は日中の屋内という設定ですが、両サイドから入った光により被写体の輪郭がハッキリし、その光は背景には影響していませんので、薄暗い環境の中でもしっかり被写体だけを浮かび上がらせています。
画像の様に、両サイド(後ろ気味)から被写体に光を当てて、真ん中を影にする事で、「真剣」「強い」などのイメージを与えることが出来ますので、スポーツ選手を起用した広告などでもよく使われます。
また、被写体自身の影意外にも、地面や壁に投影される影も立体感を表現する上では有効です。
影の伸び具合などで、被写体と壁の位置関係が分かりますし、このキャプチャの場合、左側に影を投影しなければ、右側と同じく真っ暗なので、2次元の影絵や版画のようになってしまいます。
真っ暗なショットでも、ほんの少しの工夫で奥行きを出せるということですね!
ちなみに、影を作る技術=ライティングの技術そのもので、いわば映像の心臓部みたいなものですから、ライティングは基礎からしっかり知識をつけたいところですね!
»3点照明を理解して動画のクオリティを上げる【スマホ撮影でも効果有り】
7.被写界深度
ショットの奥行きは、被写体と背景の鮮明さの違いによって示されます。
被写界深度の浅いショットは、被写体のみがシャープな為、視聴者はそれらを非常に近くに感じる一方、背景はぼやけているので、それが遠く視界の範囲外であると理解します。
実際に肉眼で目の前のものを見ている時、人の目は対象物にフォーカスを合わせ、手前にあるものや、奥にあるものはぼやけて見えています。(上のキャプチャと同じ状態)
これも人間の目及び脳の構造に対して有効な奥行きの表現方法と言えます。
8.前ボケ
被写体の手前に何かを映すことで、奥行きを表現できます。
いわゆる「前ボケを取り込む」というやつです。
カメラのレンズと被写体の間に何かが挟まることで、遠近感を強調できますので、それは奥行きを感じるということになります。
フレーミングと同じで、視聴者がその場にいるかのように感じさせるのにも役立ちます。
一番簡単なテクニックですね^^
画像は、「バレたらやばい!」というシーンで、臨場感を伝える事に成功しています。
まとめ
奥行きの表現と言っても、様々ですね!
のっぺりとした、つまらないショットにしない為にも色々工夫できることはありますし、ロケーションや光に恵まれない環境だったとしても、何かしら策は施せるはずです。
今回ご紹介した画像は、全てドラマのキャプチャでしたが、考え方は写真も動画も同じです。
これらの複数のテクニックを絡めることで、より立体的でストーリーを強調できる写真や動画を撮影できるようになりますので、是非簡単なものからでも試してみて下さい!
ではまた^^
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