映画のような雰囲気のある動画を撮影したくて、ミラーレス一眼や一眼レフカメラを買ってみたけど、正直思ってた感じにならなくてガッカリされている方、諦めるのはまだまだ早いです!
そのカメラでも理想の映像を必ず撮影できます!!
随分思い切った発言と感じられるかもしれませんが、一眼レフムービーの火付け役となったCanon EOS 5D markⅡが発売された2008年から10年以上経過している現在、各社のエントリーモデルでさえ10年前の上位モデルを遥かに上回る性能を搭載しているわけです。
なので、お気付きの通り、今必要なのは「撮影方法に関する知識」ということになります。
加えて言うなら、基礎知識などではなく、具体的な方法を知る必要があると言えます。
そこで、この記事では、理想の映像を手にする為の設定方法や注意点を解説させて頂きますが、難しい話は置いといて、要はどんな設定で撮影すれば良いのか?というスタンスで進めていきたいと考えております。
これから一眼でシネマティックな動画を撮りたいと考えられている方も、購入前に参考にして頂けると思います!
僕自身、2014年から一眼で撮影を行なっており、今はMVやCMなどの制作を行なっておりますが、使っているのはシネマカメラなどではなく一眼レフやミラーレス一眼です。
最初はEOS 6Dからのスタートでしたが、理想とする映像の質感を得る為に、最低限知っておかなければいけないことが沢山ある事は身をもって痛感しておりますので、きっと皆さんのお役に立てるかと思います。
この記事を通して「このカメラ買ってホント良かった〜(涙)」と感じて頂けるよう、即効性のある内容をお届けできればと思います^^
では早速進めていきましょう!
映像の良し悪しの基準と機材選び
本題の設定の話に入る前に、そもそも美しい映像の定義とは何だ?というところをすり合わせておく必要があります。
それによって選ぶ機材や設定も変わってきますので割と重要なポイントです。
美しい映像の種類
一眼で動画を撮影するということは、くっきりはっきりシャープな映像を目指しているのでは無いと思いますが、いかがでしょうか?
もちろんフォーカスが合っている範囲のディティールの細かさや、解像感という要素は必要ですが、スポーツ中継のような高画質さを求めているわけではないと思います。
世の中には色んな種類の映像がありますが、目的に応じて「美しさ」の基準は変わるものと考えています。
一眼で映画のような質感の映像を求める場合、「柔らかさ」「立体感」「雰囲気」「ボケ感」「解像感」などを実現する方向であると考えておりますので、「そうそう!そういうこと!」と思える方はこのまま記事を読み進めて頂ければと思います^^
どんなカメラとレンズが理想か?
前述したように、カメラはここ数年以内のものであれば、一眼レフでもミラーレス一眼でも問題ありません。
オートフォーカスの精度や、撮れる画質の事は気になるかと思いますが、正直、なんとなく4Kで撮った映像よりも、プロが撮った10年前のHDの映像の方が断然綺麗だったりしますので、結局「知識」なんだと思います。
ですので、今カメラをお持ちの方は、それを生かす方向で良いと思いますし、これから購入される方においては、予算が少なければ無理に高性能なカメラを買う必要もございません。
ちなみにレンズは標準域の単焦点がお勧めですね!
焦点距離で言うと50mm前後です。
お持ちで無ければ中古を買うのも有りですよ^^ 安ければ1〜2万円ぐらいからあります。
単焦点レンズの良さは、一言で言うと『そう!この感じが欲しかった!』という映像が撮れるレンズで、特徴は以下の通りとなります。
- 開放F値が1.8など小さいので光を多く取り込める(明るい)
- 開放F値が小さいので、仕組み上よくボケて美しい
- 軽い!
- ズームリングが無いのでマニュアルフォーカスしやすい(間違えない)
- 歪みが少ない
- なんか雰囲気が出る!
*APS-C機の場合は、フルサイズ換算で50mm相当の画角が欲しい場合、35mmのレンズが必要になります。
関連記事
»【レンズ選びで失敗しない】35mm換算とは?簡単な計算方法を紹介
»一眼動画撮影における焦点距離別レンズの選び方【初心者にオススメ】
初心者でもうまくいく一眼動画のおすすめ設定
本題のカメラの設定についてご紹介いたします。
今現在、良い設定が見つからないという方は、一つの基準として覚えて頂き、これをベースにカスタマイズして頂ければと思いますが、まずは今からご紹介する設定で、感覚を掴んで頂ければと思います!
記録設定
必ずしも4Kで撮影する必要はありません。
まずはフルHD(1920×1080/24P)で撮影してみて下さい。
4Kで撮影しなくて良い理由は、解像度が高く綺麗過ぎる為、キリッとした質感は得られますが、上手に扱わないと映画っぽさから離れがちになるからです。
随分と時代錯誤な話になってしまいますが、勿論4Kがダメと言うことではなく、何が悪いのか解らないけどビデオっぽくて安っぽい感じになってしまうという方は、単純に画質が良過ぎるのが原因かもしれません。
欲しい質感を出せるようになってから、改めて4Kの解像度でその質感を維持することを目指してみると良いです。
フレームレートは、映画で使われる24fpsをお勧めします。
適度なモーションブラーが得られる上、ビデオっぽさが無くなるのでお勧めです。
ピクチャープロファイルの設定
カメラメーカーによってメニューの名前が違いますが、映像の色や雰囲気などを決める重要なセクションです。
- Sony:ピクチャープロファイル
- Canon :ピクチャースタイル
- Nikon :ピクチャーコントロール
呼び方は違えど、操作できる内容はほぼ同じです。
各社Logでの撮影にも対応しておりますが、Logを扱うにはそれなりの知識が必要になりますので、今回は簡単に一眼ならではの撮影ができる設定をご紹介します。
SONY αシリーズの設定
カラーグレーディングを行わない、あるいは簡単な色補正だけで済ませることを前提とした設定です。
- ピクチャープロファイル:PP10
- ブラックレベル:0
- ガンマ:HLG2/HLG3
- ブラックガンマ:中 0
- ニー:マニュアル 100%(スロープ+5)
- カラーモード:709
- 彩度:0
- 色合い:0
- 色の深さ:0
- ディティール:-2
HLGを選ぶことでハイライトの質感を保ちます。
また、彩度を下げることでベタっとした雰囲気を緩和します。
更にディディールを-2にすることで程よい柔らかさを出しますが、個人的には-5でも良いぐらいだと思ってます。
Canon EOSシリーズ
2つご紹介いたします。
Canonおすすめ設定①
- ピクチャースタイル:ニュートラル
- シャープネス(強さ):0
- コントラスト:-4
- 色の濃さ(彩度):-4
- 色合い:0
スタンダードな設定だと色もコントラストも強すぎて雰囲気ぶち壊しなので、設定で最小限にしてます。ピクチャースタイルの「ニュートラル」も一番明暗差に強いプロファイルとなります。
Canonおすすめ設定②
- ピクチャースタイル:Cine Style
- シャープネス(強さ):0
- コントラスト:-4
- 色の濃さ(彩度):-2
- 色合い:0
Technicolor社がCanonと協力して開発した「Cine Style」はLogに近いガンマで、コントラストが浅くとても美しい映像を撮影できます。
簡単な色補正は必要となりますが、Logではないのでそれほど扱いが難しいものではありません。
ただ、デフォルトでは入ってないプロファイルになりますのでインストールが必要となり、対応しているカメラの情報がアップデートされてませんので、互換性に関しては保証致しかねますのでご注意下さい。
参考までに、僕が所有しているEOS 5Dmk4では問題なく動作しています。
(Youtubeを見ているとEOS RPにはインストール出来ているようです)
Technicolor CINESTYLE DOWNLOAD
インストール方法の解説動画
Nikon の設定
詳細設定ではオート(A)を選ばないようにしましょう。
- ピクチャーコントロール:フラット
- 輪郭補正(シャープネス):0
- 明瞭度:0
- コントラスト:-3
- 明るさ:0
- 色の濃さ(彩度):0
- 色合い(色相):0
後から画像処理をして仕上げるのに適したプロファイルなので、一見眠たい見た目になりますが、編集時に彩度やコントラストを微調整するぐらいですぐに色が立ち上がってきます。
Log未満のちょうど良いプロファイルが初めから用意されているのは嬉しいですね!
マニュアルモードでの撮影
シャッタースピード、絞り(F値)、ISO、これらの組み合わせをマニュアルで操作する必要があります。
上記3つは主に露出をコントロールする機能ですが、映像において露出が同じ時間軸上で変化することは好ましくありません。
例えば、部屋の明かりを消すシーンで、明かりが消えた後、オートで明るさが補正されてしまうと違和感どころの話ではなくなるのは想像しやすいと思いますが、映像とは極論光を撮影しているようなものなので、機械任せではなく狙った通りに撮影する必要があります。
同じようにホワイトバランスもマニュアルで設定が必要です。
オートホワイトバランス(AWB)は自動で白いものを白く映そうとしますので、夕暮れの赤みがかった風景が青ざめてしまうのは望ましくありませんし、カメラの角度が変わる度に色がコロコロ変わるようでは素材として使い物になりません。
慣れないうちは本当に大変な事ですが、それでも慣れる必要がありますし、思い通りの映像を撮影するにはカメラを手足のように使いこなす必要があります。
ただ、シャッタースピードに関しては固定(24fpsの場合は1/50)なので、露出に関しては絞りとISOの二つを調整するだけとなります。
考え方として、基本的にISOを上げすぎるとノイズが多くなりますので、先に絞りで露出を稼ぎに行きます。
それでも足りない場合にISOで賄うという順番になりますので、そこまで難しくはありません。
注意:被写界深度を深く保ちたい場合(フォーカスが合う範囲を広くしておきたい)は上記の限りではありません。
関連記事
»一眼レフ動画撮影で露出をコントロールする【何を捨てて何を得るか】
»【重要】 一眼レフでシネマティックな動画を撮影する為の設定
一眼らしさを生かした撮影方法
ここまでカメラの設定方法について解説してきましたが、それでも撮り方次第ではイマイチな感じになりかねませんので、ここからは、どうすれば一眼の強みを生かした撮影が出来るのか、簡単なテクニックを幾つかご紹介致します。
開放でボケを出す
お持ちのレンズは開放F値が幾つのタイプでしょうか?
理想はF1.4〜F2.8です。
F値が小さくなるほど被写体の背景が綺麗にボケますので、一眼ならではの雰囲気を出したい場合は開放で撮影することをお勧めします。
また、ボケ具合というのは被写体とカメラの距離にも関係しますし、背景のボケ具合というのは被写体と背景の距離に関係します。
部屋の中で撮影していて「あまりボケないな〜」と思われる場合は、恐らく背景が近過ぎて被写体と差がない状態なのかもしれません。
そういう場合は、外に出て、被写体の背後がズドーン!と広がっている場所で撮影してみて下さい!劇的に変わるはずです。
スナップ感覚で撮影しているとついついやってしまいがちですが、背景と被写体が近すぎないかどうかを常に意識するだけで、一気に作品のレベルが上がります^^
NDフィルターを使って日中でも開放で撮る
開放でボケを出すと言っても、明るすぎる日中の屋外などでは、F13〜F22ぐらいまで絞らないと白飛びしてしまうということがザラにあります。
そうなると、仮に白飛びが抑えられたとしても、被写体にも背景にもしっかりフォーカスが合っている状態になってしまい、一眼らしさが全く表現できません。
そこで活躍するのがNDフィルターです。
いわばレンズ用のサングラスみたいなもので、物理的に光を弱めてくれますので、明るい場所でもF値開放でボケを生かした撮影が可能です。
映画業界でも定番のアイテムで、一眼ユーザーの必需品となります!
これに関しては、買おうかどうしようか悩んでいる場合ではなく、安物でも良いのでとりあえず1つは持っておきましょう。
因みにレンズの口径に合わせて購入が必要ですのでご注意下さい。
下記がコスパの良いNDフィルターで、僕も使ってます。
撮影する環境が大切
どれだけ良いカメラと腕前を持っていても、撮影するスペース(ロケーション)が悪いと、その力を存分に発揮できません。
それに加えて「光」も重要です。
映像は様々な成分で構成されていますので、良いカメラがあれば魔法のように何でも良い感じになるわけではないのです。
「プロならどんな環境でも良い仕事するはずだ!」という意見があるかもしれませんが、それに関しては、その環境で100点を叩き出すことは出来たとしても、あくまでもその環境でという話なので、条件が整っていればもっと良い作品を撮れるはずということです。
なので、撮影よりも先に良い条件を見つける感覚というのはとても重要なスキルになります。
その条件として一番重要なのが「光」です。
例えば、強い日差しは被写体のコントラストを強くするので、優しい雰囲気には向いていませんし、人物の陰影を出して立体的に映したい場合、光源は直上ではなくサイド位置する必要があります。
屋外の撮影なら、日照時間の長い夏の16時以降が好ましいという場合もありますし、一日中太陽の位置が低い冬、はたまた曇り空の方が良いという場合など、撮りたい内容によって光の条件をイメージする必要があります。
勿論光だけに限らず、フレームに収まる物体の質感だったり、色だったり、色んな要素が関係するわけです。
おわかりの通り、カメラの性能などは関係なく、良い撮影をするには、その環境があるか考えるところから始まるということですね。
余談ですが、カメラを買った日の晩に室内の蛍光灯の条件下で、机に乗ってる日用品などを試し撮りしてみて「う~ん何か違うな~、まぁまた明日でいっかー」という判断に至るのって、環境が最悪だからですよね?なのでそれって正しい感覚だということです!
まとめ
一眼で映画のような雰囲気のある動画を撮影する為の設定や撮影方法についてご紹介させていただきました。
極力具体的な内容でお届けしようと考え、カメラの設定に関してはある意味「決め打ち」のようなお伝えの仕方になってしまいましたが、僕自身が実証し、手応えを感じたやり方なので、そのまま試して頂いて良いかと思います。
この記事では、難しいことはさておき、要はどうやったら良い感じで撮れるのか?というところに重きを置いてお伝えしましたので、仕組みの部分に関してはかなり省略させて頂いております。
もし詳しい裏付けなども知りたいという方は、各項の文末に関連記事へのリンクを掲載しておりますのでじっくりご覧頂ければと思います。
とは言うものの、全てを理解するのって正直後からでも良いんですよね。
何よりもまずは、お持ちのカメラで理想の映像を撮影できる事が最優先で、もしドンピシャでハマれば、しばらくはその設定で撮影を楽しんで頂き、その内気になったってきた頃合いで詳しい事を学べば良いと思います。
ちょっと長い記事でしたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました^^
ではまた!
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