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一眼レフ動画撮影で露出をコントロールする【何を捨てて何を得るか】

投稿日:2020-06-16 更新日:

Exposure Triangle


このような図を見たことありますか?

これは、一眼レフで動画撮影を行う上で必ず付きまとう露出設定の関係性を表したものです。

見たこと無い、あるいは見たことあるけど理解するまで至ってないという方はこれを機に覚えて下さい。

頭で理解しているだけだと瞬時に判断出来ないので、意識しなくても手が勝手にベストな設定を行っているような状態が望ましいです。

この記事では露出設定に関係する「絞り」「シャッタースピード」「ISO」に関する説明と、実際によくあるケースの実例を挙げて、対処方法を説明していきたいと思います。



僕は年間数十本のMV撮影を行なっておりますが、屋外の撮影時は天候は勿論、日の入りの正確な方角や時間なども事前に確認した上で撮影に臨んでます。

それぐらい重要な露出の話です。


一眼レフ動画撮影で露出をコントロールする

Exposure Triangle


上記の図は「Exposure Triangle」という呼ばれ方をしてますが
辺と辺の繋がりは特に意味ないので、3つのブロックに分けて考えて貰って大丈夫です。


絞り(f値)

絞りとはレンズの機能のことで、レンズから入る光の量を調整する部分です。
図にあるように複数枚の羽が閉じたり開いたりして穴の大きさを変えることで、光が入ってくる量をコントロールしています。

この図で言うとf1.4(開放)が一番明るく、f16が一番暗い状態となります。

上記で説明したように物理的な仕組みで明るさを調節する為、暗い場所で開放にした際もデジタルノイズが出ません。

ただし開放に近付けば近付く程、被写界深度が浅くなる為、フォーカス(ピント)が合う範囲が狭くなります。

被写体との距離が近ければその範囲も更に狭くなる為、場合によっては人物の瞳にはフォーカスが合っているが、耳から後ろはぼけていると言う事もありえます。

この場合、明るさを優先するのか、ディティールを優先するのか判断に迫られます。

また、このぼけと言うのは一眼レフで撮影する際の大きな魅力の一つで、f値が小さければ小さい程前後が大きくぼけてくれますので、被写体と背景を分離した撮影が可能です。

逆に明るすぎて真っ白になりそうな環境でも目一杯絞ることで、白飛びせず被写体を捉えることができます。人間が目を細めた時と同じような効果ですね。



シャッタースピード

シャッタースピードとは、シャッターが開いている時間のことです。
もっと言うなら、カメラ内のセンサーに光が当たっている時間のことです。

その時間が長ければ被写体の動きを長く観測しますし、その分動きに対してのモーションブラーが多く発生します。逆に短いとモーションブラーは少なくなります。

つまり、シャッタースピードが長いとブレやすくなると言うことで、短いとブレにくいと言うことです。これだけ聞くとシャッタースピードを必要以上に長くする意味は無さそうに聞こえるのですが、シャッタースピードが長い方がセンサーが光を取り込む時間が長くなるので明るさを確保することができるのです。モーションブラーは多くなるが明るさを確保できる。
暗い場所でほとんど動かない被写体を撮るのなら有効な選択肢となります。

ちなみに一眼レフでの動画撮影は24fpsや30fpsで撮ることが多くなると思いますが、シャッタースピードはその数値以下に設定することは出来ません。なのでこの場合のシャッタースピードの最小値は1/30ということになります。



ISO

ISOとは、カメラのセンサーに取り込んだ光を電気信号に変えて増幅させる機能のことを指します。暗い場所でもカメラのパワーで明るくすることが出来るわけですが、ISOを高くすればその分ノイズも増幅されます。

最小値のISO 100が一番ノイズは少なく、最大値はカメラにもよりますが12800や25600まで使える場合がありますが、一般的にはISO 1600までと言われています。

しかしこれも10年前から言われている話なので、実際最近のフルサイズ機だとISO 3200まではノイズが気にならないものもあります。APS-C機はセンサーのサイズが小さいのでフルサイズ機よりはノイズが出やすいと考えた方が良いでしょう。

もちろんノイズが発生しないのが一番好ましいので、使わずに済むなら使わない方が良い機能です。

*図ではISOが高くなるにつれて暗くなっているように見えますが、これはノイズが増えている事を表現しています。




状況に応じた対策

状況に応じた対策


柔軟さは大事です。

その撮影で何が一番需要なのか判断に迫られる場面は多いです。
しかし、幸い個人が所有しうる環境だと、やれる事の幅が限られている為、選択肢は非常にシンプルです。

とはいえ基準は持っておかないと判断できないのも確かなので、幾つか例をあげてみます。



露出アンダーの場合

露出アンダー

シチュエーション

  • MV撮影
  • 月夜の撮影、近くに街灯無し
  • 空をバックに丘の上で立ち尽くしている人を撮る
  • 遠くの街灯りのおかげで空はぼんやり明るい
  • レンズは 50mm F1.4

さて、これで適正な露出を得るには??

結論、照明を使って下さい。
と言うのはこの記事の流れからいくと無しなんでしょうが、答えは「照明を使う」で間違いありません。ですが今回はカメラの設定でどこまで追い込めるかと言う話なので、まず絞りはf1.4でこれが開放値だとしましょう。被写体があまり動かないのならシャッタースピードを1/30にすることでわずかに露出は得られますが、それでも暗いのでISOを上げます。
ISO 1600でギリギリ被写体が捉えられる状態です。ノイズは確かに乗っているがなんとか編集でごまかせそう。本当はISO 3200まで上げたいが、さすがにノイズがやばいのでISO 1600でキープ。

さてこの撮影はうまくいくのでしょうか?

答え→大失敗する。

おそらく空ばかり明るくなって(夜とは思えないほど)、おかげで人物が浮き出て「映ってる」ように見えるでしょうが、肌と髪の毛の境もわからない状態。ノイズでディティールは崩壊しており、編集でデノイザーを使って処理して更にディティールが失われ、デノイザーを使ったせいで空の階調が乱れバンディング(むら)が発生。

もう地獄ですよね。

どうすべきだったのか?
この場合カメラとレンズではお手上げという事を知っておきましょう。
f1.0のレンズがあれば ISOを一段落して800に出来たかもしれませんが、1段の変化では太刀打ちできない暗さだと考えられます。

頭を働かせる方向としては「いかに自然な光源を作るか」というところですので、ロングショット(遠いところからの広範囲)でなければスマホでもなんでもあるものを使って被写体が見える状態にすべきでした。元から照明を準備しておいて欲しかったですが、無いならそれしかありません。

まぁそもそもの話をすると、夜のシーンだからといって本当に夜に撮る必要は無いんですがね。




露出オーバーの場合

露出オーバー

シチュエーション

  • MV撮影
  • カンカン照りの真夏の白い砂浜
  • 浜辺を走っている水着モデルの膝上を撮る
  • レンズは85mm F2.8

さて、これで適正な露出を得るには??

結論、NDフィルターを使って下さい。
またもや初登場のキーワードを出してくるのは無しなんでしょうか?でもやっぱりNDフィルターを使って下さい。ご存じない方の為に簡単に説明すると、レンズの前に装着するいわばサングラスのようなもので、用途はこのケースのように明るすぎる環境で露出をコントロールするために使います。

ではNDフィルターを使う理由について解説します。

まず、カメラとレンズの機能だけで適正な露出を得ようとした場合、ISOは最低の100にして、絞り(f値)を絞っていきます。
思い切ってf22まで絞りましたがまだ若干白飛びしています。
次にシャッタースピードですが、フレームレート24fpsに設定した状態で1/100まで上げてようやく露出オーバーは回避できました。モデルの肌もテカリが抑えられたように見えます。

しかし問題が2つあります。

① f22まで絞る事で背景までクッキリ映り過ぎてビデオカメラで撮った雰囲気になっている。

② シャッタースピードを1/100にした事でモーションブラーが減り、ぎこちなさが出ている。

もう一つ、絞りすぎによる回折現象という全体がわずかにぼやけてしまう現象も心配だが、一旦それは置いといて上記の二点について対策を考えるとします。

と言っても①②を少しでも戻すと露出オーバーになります。
シャッタースピード1/100でもOKとする場合はありますが、被写界深度の問題は被写体に思いっきり近づいて背景をぼかすぐらいしか方法がありません。

目的とするショットを収めるにはやはりNDフィルターが必要です。
まずNDフィルターを使ってf値を4段分落してます。
次にシャッタースピード1段遅くして1/50にします。
そして絞りを3段開いてf8.0にします。

これで露出が適正な上、狙った質感で撮影が可能です。

NDフィルターのメーカーによっては解像度の低下が顕著に出たりといったこともあるので、注意は必要ですが、その撮影において一番重要視すべきは何かをしっかり見極め、その方針に沿った対応策を講じるべきです。

【重要】 一眼レフでシネマティックな動画を撮影する為の設定



まとめ
状況に応じた対策の項では結局モノに頼るというオチになりましたが、
パワープレイで何とかなったところで、それは苦し紛れでしか無いので不本意ですよね?

他にも色んなケースがあって、毎回悩ませてくれますが、許しちゃいけないラインというのをしっかり持っていれば事前の準備も変わってくるでしょうし、面倒が付きまといますが絶対良い作品が作れます。

是非色んな環境で撮影して、絶望感と経験値共に手に入れて下さい!

では!



撮影
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Indieemotion(インディーモーション)管理人
Shinpei Nakamura(ADEMOYO)

2014年から映像制作を開始。
制作案件はMVを中心にライブビデオや企業/店舗のPRビデオまで幅広く、企画から撮影/照明/音声/編集に到るまで基本ワンオペのハードモードFilmmaker。ヒーヒー言いながらやってます。

旅と屋台を愛し、昨年はストック素材撮りと称して1年弱アジアからヨーロッパを彷徨いながら撮影を敢行。超楽しかったです(^^)
このブログでは、誰でもカンタンに出来るビデオ撮影方法から、こだわりり抜いた撮影/編集まで、割と広めの役立つ情報を公開していこうと思っています!

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“さらに良くしようとして、良いものを駄目にしてしまうことが多い”シェイクスピア