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在宅ワークやYoutube撮影に役立つ『正しい防音方法』遮音と吸音の違い

投稿日:2021-05-28 更新日:

近年増え続けている在宅ワークですが、家族にうるさいと言われたり、近所から苦情が入ったりすることもあるようで、なかなか肩身の狭い思いをしてお仕事をされている方が多いのでは無いでしょうか?
僕もLINEやZoomを使った打ち合わせをする事が増えていますが、いつの間にか大声で話している事ってあるんですよね。
Youtubeの撮影をされる方においては、割と大きめの声で喋るでしょうから夜間の収録だと結構気を使うと思います。

そして多くの方が、あの手この手で防音を試みることになるのですが、実は防音というのは「音」の習性を理解してないと、全く意味がなかったりするので、間違った施工をすると折角買った防音材が無意味ということもあるんです。。。

なんとなく声が響かなくなった気がするけど、隣の家にはどう聞こえてるのかな?



ちなみに、僕は過去に2回DIYで防音室を作った事があるのですが、その時の下調べで勉強した内容は勿論、実際に施工してみて解った事が多くありますので、その経験を踏まえて、この記事では目的別にポイントを押さえた正しい防音方法をご紹介できればと思います!


下記の動画は1軒目の防音室解体時のものですが、流石にここまでガチでやるのは大変だと思うので、施工時間も含めてコスパ重視な方法をご紹介出来ればと考えています。




当ブログは普段映像制作にまつわる情報をお届けしておりますが、今回は「防音」についてです。
動画編集だと、そこまで音量を上げることは無いと思いますが、今後本格的に編集ルームを作りたいと考えておられる方には参考にして頂けると思います^^




正しい防音方法【遮音と吸音の違い】

正しい防音方法【遮音と吸音の違い】

まずは音の習性を理解するための基礎知識からです。
重要な5つのポイントをご紹介します。



1.遮音と吸音を理解する

遮音とは、音を跳ね返して遮断する事で、『防音』を目的とする場合「遮音材」が必要になります。
そして吸音とは、ぶつかってきた音(空気の振動)を吸収して弱くすることを指します。
ただし、本当に吸収するわけではなく、例えばグラスウールの場合は振動を熱に変換することで弱くするという特性があります。



2.重さと遮音効果は比例する

とにかく重ければ重いほど遮音効果は上がります。
例えば、鉄の扉と木の扉なら、間違いなく鉄の扉に軍配が上がるように、重たい素材の方が音を遮断してくれます。



3.音は物を伝って響く

子供の頃に作った糸電話が良い例ですが、音の正体である空気の波動はそのまま物体を伝って、その先で鳴ります。
床にスプーンを落としてしまった時、伝わるのは下の階だけでなく、床から壁、壁から柱、柱から上の階、という風に、物質で繋がっているところ全部に届きます。(勿論小さい音なら遠くまで伝わるエネルギーが無いので心配は要りません)



4.防音の極意は”層”

音を”効果的”に遮断するには、層構造が最適です。
二重サッシが解りやすい例ですが、厚めのガラス板1枚よりも、その半分の厚さのガラス板2枚の間に空気層を設けることで、弱まった波動がもう一度空気を伝い、2枚目を通過した時には殆ど振動が残ってない状態にする仕組みです。
音楽スタジオの壁なども同じ仕組みで、種類の違う素材で空気層を確保しつつ何重構造にもなっています。



5.音は隙間から漏れる

凄く当たり前のような話ですが、音は隙間から漏れるものです。
耳を塞ぐ時に少しでも隙間があると聞こえるのと同じで、それは自宅の部屋ならドアの隙間や窓の隙間、換気口などにあたります。
ちゃんと塞ぐだけで音漏れを軽減できるので、一番に手を付けておきたいところですね!




どんな防音素材があるのか?

どんな防音素材があるのか?

前項で、遮音と吸音が別物であるということをご説明いたしました。
ではそれぞれどんな種類の素材があるのかをご紹介いたします!



遮音材

  • 塩ビ樹脂シート
    手頃な価格で販売されている事が多くカッターナイフで加工しやすいという特徴があります。
    遮音性能は厚さにもよりますが、1.2mm程度のものなら全体にほんのり遮音できるぐらいで考えておいた方が良いです。
    あくまでも遮音材なので、基礎材として扱うものです。


  • ゴム
    塩ビ樹脂シートと同じく手頃な価格で販売されている事が多く、厚手のものが多く、その分重くなります。
    遮音効果はある程度期待できますが、1層の施工ではまずまずと言ったところかと思います。
    遮音材なので、基礎材として扱うものです。


  • 特殊素材(アスファルト+鉄粉)
    僕が実際に使用した商品で、「すーぱー静香・かべ」という商品がありまして、可愛い名前とは裏腹に、鉄粉90%とアスファルトや塩ビを練り合わせた、面密度7.2kg/平方mという驚異の遮音材があります。
    僕はFK240というタイプ(厚さ2.4mm×幅940mm×長さ5m:¥12,000/ロール)を6本買ったのですが、かなり満足のいく結果が得られました。
    アスファルト特有の油っぽい匂いがあるので、剥き出しでは使えないというか、これも基礎材として使います。
    そして濡れたジーパンの5倍ぐらいの重さなので施工が大変です!

    Amazonなどで商品の取り扱いがないので、気になる方はホームページから直接問い合わせてみて下さい^^
    »石井商事株式会社




吸音材

  • ウレタンスポンジ材
    よく見かけるデコボコの柔らかそうなやつです。
    一般的にこれが防音材と認識されがちですが、大した遮音効果はなく、触ったらわかると思いますが音を吸収するような密度が無いものばかりなので、部屋の反響をマシにするぐらいと考えておいた方が良いです。
    残響音を軽減する事は出来るので、それが目的なら解決ですが、近隣への音漏れや、外から入ってくる音のシャットアウトは期待できません。


  • フェルト
    手芸用のフェルトではなく、高密度に圧縮されたフェルトがあり、手軽に扱える為人気があります。
    多少の遮音効果はあると思いますが、軽い素材ですから室内の調音メインと考えておいた方が良いです。


  • グラスウール
    僕が一番お勧めするのが、コスパの良いグラスウールで、圧縮したタイプのものです。
    実際に使用したのは、GC25(厚さ25mm×縦910mm×横605mm)という密度32kg/立方mの商品で、40枚ぐらい買った気がします。
    グラスウールは音の振動をキャッチして熱に変換するという特性を持っていて、圧縮密度が高いほど低音域にも効果を発揮しますが、単体だと遮音性はそこまで強くないので、遮音材と合わせての施工が理想です。
    とは言え、ここまで吸音性能が高いと、単品でも人の会話やテレビの音などはかなり弱らせてくれるので、近隣への漏れにもある程度効果が期待できます。
    ちなみに、束で届いたGC25をリビングの隅に置いてただけなのに、反響音がピタッ!と無くなって、耳がムズムズする感覚に襲われました。
    最終的に防音部屋全面に施工したのですが、中〜高域がグングン吸い取られるので、音楽が味気なくなってしまうという現象まで起きていました。
どんな防音素材があるのか?

»GCボード 25mm厚(グラスウール吸音材) (Amazonでの取り扱いはありませんでした)

下記は類似商品(ほぼ同じ)




目的別の素材選び&施工方法

目的別の素材選び&施工方法

どのレベルの防音を求めるかで、扱う素材や施工方法が変わりますので、当然コストもそれに左右されます。
そして、賃貸マンションやアパートの場合、退去時ことを考えると、出来るだけ壁や天井を傷付けたくないという事情があると思います。
悩むところですが、今抱えているストレスに対して「コスト」「手間」「効果」+「リスク」のバランスを考えて、目的に合った防音をする必要があるので、この項では4パターンに分けて防音例をご紹介しますので、ご自身の環境にあった物を見つけていただければと思います^^




1.見た目がオシャレならOK

見た目重視ならAmazonで売ってるウレタンスポンジ材を壁にピン留めするだけで良いと思います。
ある程度の吸音効果は望めるので、残響音は軽減できます。
虫ピンや押しピンで固定できるので、壁のダメージが少ないというところは良いですね!



2.音の反響を無くしたい

安いウレタンスポンジ材で問題ありませんが、ある程度の面積が必要になります。
まず、最優先で声が出る方向の壁に施工する必要があるのと、それ以外の面(天井含む)にも満遍なく施工する必要があります。
枚数が少なすぎるのは問題ですが、ある程度用意出来るのであれば、あとは配置のバランスで効果を最大限に引き伸ばすことは可能です。
部屋の構造にもよるので、仮留めで色々試してみて下さい!



3.近所への音漏れ、外からの騒音をカットしたい

遮音が必要です。
壁に遮音材を貼り付けて、その上から吸音材を貼るという方法で、ある程度ましにはなりますが、遮音材から壁に直接音が伝道しますので、最大限の遮音効果は得られません。
理想は元の壁と遮音材の間に、音を減衰させる為の空気層が欲しいのですが…何か良い方法は無いかと思い、いろんな商品をみてたら良いものがありました!
»ワンタッチ防音壁

ワンタッチ防音壁
出典:防音専門ピアリビング


これなら壁に直接施工しても良いですね!
このタイプは実際使った事がないのですが、音を減衰させる為の理想的な構造ですし、手軽です^^
ただし1枚あたりの値段が高いので、時間に余裕のある方は同じ構造の物を自作して壁に固定する(倒れてこないように注意)方が、安く上がると思います。
それこそ記事の前半でご紹介した素材の組み合わせでなんとかなるかもしれませんね!

※ 作業時間を考慮すると結局買った方が安くつく場合もあるので人によります。



4.徹底的に防音したい

とことんやるなら、僕が行った方法「部屋の中に部屋を作る」が究極です。
元の壁を全く傷つける事なく、内側から数えて7層構造になっているので、部屋の中で大声で叫んでも、外からは蚊が鳴いている程度にしか聞こえない=当然ご近所に音は漏れないですし、部屋の中が静かで落ち着きます。

目的別の素材選び&施工方法

床はそこそこしかやってませんが、天井も上記と同じ構造で、各面は元の部屋から10cm隙間を開けてます。
ちなみに、これをやるには下記も考慮する必要があります。

  • 設計図が必要
  • 骨組みの材料費もかかる
  • 工具を揃える必要がある
  • 施工に時間がかかる
  • 完成するまで家の中が無茶苦茶
  • 工事中の騒音で苦情が来ないように注意
  • エアコン、換気口なども考える必要がある
  • 解体後は産業廃棄物処理になるので、ゴミ代が高い

これを少し軽量化するなら、空気層と一番外側の石膏ボードと、一番内側の石膏ボードを無しにして、LGS(軽量鉄骨)などで直接部屋の壁に骨組みを作って施工するという方法もありますが、それでも結構大変です。
僕は2回とも木材で組みましたが、かなりの重さになるので、木造物件ではあまりお勧めできません。

目的別の素材選び&施工方法

正直言って、人の声を遮断する為だけならここまでやる必要はありません。
お金も時間もかかりますからね。


日常生活レベルの防音であれば、個人的には、吸音効果の高いグラスウールボードを贅沢に使ってみるというのがオススメです。
ピンで壁に固定できるので簡単ですしね^^




まとめ

防音まとめ

音の習性と、素材の種類、目的別の施工方法をご紹介しました。
防音がうまくいかない場合は、下記の項目に該当しないか考えてみて下さい。
その中で、一番音が漏れている原因が何かを把握した上で適切な措置を取る必要があります。

  • 遮音と吸音を理解しているか?
  • 重さと遮音効果は比例する
  • 音は物を伝って響く
  • 防音の極意は”層”
  • 音は隙間から漏れる



最後に一点、ネットで安い吸音材が沢山出回っている為「防音」に対する相場感が下がっていると思いますが、その感覚で予算を組んで実行すると、間違いなく失敗します。
「安かろう、悪かろう」が露骨に現れる分野なので、初めからある程度見積もっておくことをお勧めします!

これからの時代、家に居る時間が多くなることを考えれば、一回じっくりと考えてみたいところですよね^^
防音のお話でした。

ではまた!!



仕事, 音声
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Indieemotion(インディーモーション)管理人
Shinpei Nakamura

ビデオグラファー / 映像クリエイター / 映像ディレクター として活動しており、建築・広告・MV などの映像制作を行なっています。
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