良いカメラワークを知っていると、作品に厚みが増します。
しかし、それを知らずに撮影していると、同じようなショットばかり撮ってしまって、後々編集で困ることになります。
例えばジンバルを使った撮影だと、被写体をセンターに入れた日の丸構図で、寄ったり引いたりばかりって事ありませんか?ショット単体で見る分には全く問題ないですが、一本の作品にする場合、同じ動きばかりだとつまらなくなりますので、割と重大な問題です。
そこで、今回はマストで覚えておきたい基本のカメラワークを10種類ご紹介したいと思います!
普段何となく行っているカメラワークも含まれているかもしれませんが、この記事ではその動きの「意味」についても触れていきますので、実践できるようになれば、表現の幅が一気に広がるはずです。
カメラワークの種類を覚えるということは、そこにストーリーを宿す事が可能なるということです!是非マスターして、伝えたいことを効果的に伝えましょう^^
良いカメラワークとは?基本の10種類を解説
「カメラワーク」とは、カメラをどう動かすか?という事です。
「カメラアングル」や「構図」と似たイメージがあるかもしれませんが、混同しないように気を付けましょう!
勿論一つのショットは上記3つの要素を中心に構成されますが、今回はその中の“カメラの動き”という点に絞ったお話になります。
ちなみに英語ではCamera Movementと言います。
カメラアングルについてはこちらの記事をご覧下さい。
»動画撮影の鉄板カメラアングル12選【心理的な効果を生み出す】
今回ご紹介するのは、カメラワーク(カメラの動き)です。
1.フィックス / Fixed Shot(Static Shot)
カメラの動きが無い固定のショットです。
対話のシーンや、空間を印象付けるのに有効で、カメラが動かないことで正確な構図を作る事ができます。
更に、モデルや俳優のパフォーマンスを際立たせる効果がありますし、カメラワークとしては動的なエネルギーが全く無いので、無力感の表現として使うこともできます。
三脚で固定した撮影ってつまらないイメージがあるかもしれませんが、フィックスで印象的なショットを撮れると作品に緩急を付けやすくなります。
2.プッシュイン / Push In
カメラが被写体に近付いていくのがプッシュインです。
イメージのままですが、多くの場合じっくりと寄っていく事が多いです。
プッシュインは、その瞬間を強調することに向いており、特定の物や人に注意を向ける事ができ、そのキャラクターの精神状態や思考プロセスを表現することに向いています。
何となく寄ったりする事があるかもしれませんが、撮影時に「感情」を決めておくと生きた素材になりますね!
3.プルアウト / Pull Out
プッシュインとは逆にカメラが引いていくショットです。
カメラが離れる事で被写体への注目を切り離し、場面全体への注目に切り替えさせる効果があります。
シチュエーションを徐々にを明らかにするというショットは映画の中でもよく使われ、その場の設定が少しずつ明らかになる事で、視聴者を引きつける事ができます。
また、被写体をその場に取り残す事で、弱さを表現する事もできます。
弱さと言っても、ネガティブなことばかりではなくて、例えばラストシーンで大都会をバックに一人たたずむ女性からゆっくりプルアウトしていくショットからは「儚さ」「寂しさ」「空虚さ」などを感じる事ができますよね?
こういった”エモさ”の表現にも向いているという事です^^
4.トラッキング / Tracking Shot
カメラを物理的に動かして、被写体を追跡するショットです。
追跡と言っても、後方からだけに限定されるわけではありません。
プッシュイン/プルアウトと違うのは、被写体と共にカメラが動くところで、ジンバルやスタビライザーが大活躍するショットですね^^
「どこへ向かっているのか?」「そこでどうなるのか?」と思わせる効果があり、映画では視聴者を没頭させる事を目的とした長回しもよく使われます。
緊張を高める効果もありますので、短めの作品でも、ただ目的もなく歩くのではなく、その先の展開を用意しておき、それを期待させる(または裏切る)トラッキングだと効果的ですね!
5.トラッキング / Trucking Shot
またトラッキングショット??と思われたかもしれませんが、こちらは「Truck」で、荷物を運ぶトラックの意味です。
基本的に、カメラが横から被写体を追跡するショットで、昔はトラックにカメラを乗せて撮っていたので、こういう名前になったそうです。
ややこしいですね笑
カメラが横方向に動きなら被写体を追跡する事で、視聴者は画面上のキャラクターが体験している空間の移動をリアルタイムに体験でき、自分がその一部であるように感じさせる事で没頭感を高めます。
雰囲気の良いロケーションで、ミディアム(腰から上のアングル)で横を並走するショットは比較的撮りやすいですが、全身を入れて背景が変わっていくショットにもチャレンジしたいですね!
6.アーク / Arc Shot
カメラが被写体の周りを周回するショットです。
基本的に被写体はその場を動きませんので、視聴者を被写体に集中させ続ける効果があり、周回する速度によっても表現できる内容は変わります。
例えば、カメラアングルと合わせて以下の内容が表現できます。
- ヒロイズム・・・ローアングル+ゆっくり周回
- 親和性・・・アイレベル+ゆっくり周回
- パニック・・・ハイアングル+早く周回
- 緊張・・・クローズアップ+早く周回
想像できましたか?
単に「背景を沢山取り込みたい!」という使い方も全然ありだと思いますが、周回する事で得られるエネルギーを生かせると、作品に深みが出ますね!
ちなみにジンバルを使ったアークショットは、レンズの焦点距離が長くなる程センターをキープしにくくなるので、50mm以下のレンズが扱いやすいです(ザックリですが)。
7.パン / Pan Shot
三脚に固定されたカメラを右左に振る動きをパンと言います。
定番のカメラワークで、退屈なイメージがあるかもしれませんが、用途を明確に理解しておくことで大きな武器になります。
全体をゆっくり映す事で少しずつ情報を明らかにしますので、シーンの説明としては勿論、期待を高める効果的もあります。
また、キャラクターの行動を追跡する用途でも使えます。
単に全体像を広範囲で捉える目的でも使用されますが、パンの停止位置に何があるか(物やアクション)が明確な場合は、より効果的と言えます。
三脚の種類は、写真用だとカクついてしまうので、ビデオ用の三脚が理想です!
ただ、重すぎると持ち運びが大変なので、そこは積載重量も含めて慎重に選ぶ必要がありますね!
8.ウィップ・パン / Whip Pan Shot
鞭で弾くように高速で切り替わるパンをウィップパンと言います。
早いパンは、ショットにエネルギーを与えるだけでなく、キャラクター間の関係性も表現出来ます。
また、トランジションとして空間を移動させる用途で使われることもあります(Vlogなどでは特に!)。
下記の動画は『ラ・ラ・ランド(2016)』より、「これでもか!」と言うぐらいウィップ・パンの効果がわかりやすいシーンです
シーンの切り替え以外にも、「人物→人物」「巨大ビル→人物」「高級車→自転車」などの関係性がユニークなショットを作品に加えると面白いかもしれませんね^^
9.チルト / Tilt Shot
カメラが固定された状態で上から下、またはその逆の動きをするショットです。
チルトは、シーンの垂直性を表現するのに向いており、下から上に煽る事で被写体の強さやスケールの大きさを表現できる一方、上から下に傾ける事で被写体の弱々しさを表現することもできます。
パンと同じく、ゆっくり情報を明らかにする事で「誰なのか?」「どこなのか?」と視聴者に期待を持たせる効果がありますが、大きい被写体の全体像を収めるだけでは、ただのニュース映像になってしまいますので、カメラを傾けたその先に何があるのかは重要です。
三脚は油圧式のビデオ用三脚に限りますね!
10.カメラロール / Camera Roll
レンズの向きを維持しながらカメラを同軸上で回転させるショットです。(時計の針のように)
アークショットと違うのは、カメラ(レンズ)が軸となって自ら回転するというところです。
カメラロールには、方向感覚を失わせ、平衡を不安定にする効果があります。
「安定していない」というのは、シチュエーションによって大きな意味を持つ事があり、それは精神的なものであったり、立場的なものであったりします。
アクロバットな画として、キャラクターの動きに併せて使われる事もありますが、そこには「スリル」という未知の要素を含んでいる事が多く、完全に上下逆さままでいくと、気持ち悪さを通り越して新たな意味を見出すことにも繋がります。
なんとなくジンバルの回転機能を使ってみたいところですが、視聴者に意図しない感情を持たせる事があるので、狙った使い方以外では注意が必要ですね!
以上がマストで覚えておきたい10種類のカメラワークです。
実践されている方法が多いと思いますが、それぞれの意味を理解する事で、より効果的になるかと思います。
あと、当然と言えば当然ですが、やはり映画を見るのは勉強になります。
結構セオリーに忠実にカメラワークを使っている作品が多いですし、うまいこと組み合わせたりもしますので、唸りながら見てしまいますね^^
契約しているサブスクのサービスがあれば是非有効活用しましょう。
まとめ
代わり映えのない展開に変化を付ける為に、良いカメラワークの種類を増やすというところから入ったお話しでしたが、実際どのカメラワークひとつとっても、表現できる内容が異なってくる事がご理解頂けたと思います。
とは言え、全て意図した通りのショットを撮るのって大変ですから、まずは手持ちの機材で実践できる方法を取り入れてみて、単に作品の緩急を付けるといった用途だけでも良いと思っています!
おそらく、うまくハマったカメラワークがあれば、それは自然と手札になると思いますし、それって何かしら味をしめたって事なんだと思います。
そうやって徐々に表現の幅を広げていくのが良いのではないでしょうか^^
もし同じパターンのショットばかり撮っちゃうな〜と言う方は、一通り試してみて下さい!
ではまた!