
ソニーのα6400やα7Ⅲ、α7sⅢを購入して動画を撮ってみたけれど
「あれ?なんか普通じゃない?…」
「映画っぽくならないんだけど…」
「やっぱ専門的な勉強が必要なのかな。。」
と感じられる方って結構多いのではないでしょうか?
「どうやらS-Logを使う必要があるらしい」というところまでは解るけど、露出のコントロールなどを含めてハードルが高いと感じられている方も多いのでは?
でも折角高いカメラを買ったので、手っ取り早く理想の映像を手にして周りを驚かせてやりたいですよね!!
安心して下さい!いわゆるシネマティックな映像を簡単に手に入れる方法があります。
専門的な事を勉強する必要もなく、しかも正攻法で実現できるので、そこから作品の幅が一気に広がると思います。
先にネタをバラしてしまうと、重要なポイントはカラーグレーディングを想定したピクチャープロファイルの設定です。
そしてこの設定というのは個々で好みの設定があり、どれが正しいと言うのが難しいので、今回は僕が使用しているHLG3を使う場合の詳細設定を全て紹介します。
そしてカラーグレーディングですが、一からやる必要はありません。
詳しくは後ほど解説しますが、無料のLUTをご紹介しますので、正しく利用することで、一発で理想の映像を手に入れることが出来ます。
それではまいります!
ピクチャープロファイルの設定

僕は2014年から映像制作を行っております。
普段MV制作の案件を頂く事が多く、当然流行りの色合いをリクエストされることも多々ありますが、色一つで作品の雰囲気を大きく左右するので超重要です!
この記事でお伝えする内容は、映像を綺麗に発色させる為の知識の基盤となるものなので非常に汎用性の高い内容と考えています。
LUTを適応する前提の設定
まずLUTを適応するには、Log(S-Log)やHLGでの撮影が必須となります。
なぜなら、ソーニーのピクチャープロファイルのPP1~PP4は忠実な色を再現する設定なので、撮影後に色を調整出来る余白が用意されてない為です。
(PP5とPP6は上記よりも余裕のあるプロファイルですが、難しいのでここでは割愛します)
PP1~PP4の設定で撮影すると、普通のビデオのような見た目になりますよね?
これはシネマティックとは程遠いですし、後で調整するには向いてないものです。
なので、S-LogならPP7~PP9、HLGならPP10を使います。
- PP1:[Movie]ガンマを用いた設定例
- PP2:[Still]ガンマを用いた設定例
- PP3:[ITU709]ガンマを用いた自然な色合いの設定例
- PP4:ITU709規格に忠実な色合いの設定例
- PP5:[Cine1]ガンマを用いた設定例
- PP6:[Cine2]ガンマを用いた設定例
- PP7:[S-Log2]ガンマで撮影するときの推奨設定
- PP8:[S-Log3]ガンマと[S-Gamut3.Cine]で撮影するときの推奨設定
- PP9:[S-Log3]ガンマと[S-Gamut3]で撮影するときの推奨設定
- PP10:[HDR1/2/3]ガンマと[BT.2020]カラーモードで撮影するときの設定例
そして今回はPP10(HLG)を使った設定を紹介します。
HLGにLUTをあてるのは間違いか?
「そもそもHLG(Hybrid Log Gamma)はそのまま使うものであって、カラーグレーディングを施すものでは無い」と言う意見がありますが、そんなことはありません。
HLGは、BBCとNHKが放送用に開発したもので、配信に最適化されておりHDR映像をディスプレイに送信するための配信規格だと言うのは勿論正しいですが、HLGはダイナミックレンジが広く、黒つぶれ、白飛びが起きにくく露出設定の許容範囲が広いので、グレーディングにも向いているガンマなのです。
そしてLUTの意味合いが2つに分かれており、ちょっとややこしい話ですが、本来のLUTの目的である”目的のカラーペースに変換する”という当て方ではなく、”Look=色の雰囲気”を調節する為の用途としてLUT(厳密にはLook)を使うわけなので、それは何の問題もないことです。
HLGはHybrid Log Gammaの略で、Rec 709とLogのハイブリッドを意味している。 ソニーのFS7、α7RIII、AX700などのカメラで画像プロファイルとして搭載されているが、これは、HDR映像をディスプレイに送信するための配信規格だ。しかし、このカーブは配信に最適化されているが、撮影とグレーディングにも非常に優れたガンマでもある。
CineD:HDR、SDRとHLGの関係とは?
詳細設定
前置きが長くなってしまいましたが、設定内容を公開いたします!
人によって設定は違うと思いますが、一つのパターンとして試してみて下さい。
- ピクチャープロファイル:PP10
- ブラックレベル:+12*
- ガンマ:HLG3
- ブラックガンマ:中 0
- ニー:マニュアル 100%(スロープ+5)
- カラーモード:BT.2020
- 彩度:-5*
- 色合い:0
- 色の深さ:0
- ディティール:-3
撮影モードは勿論マニュアルモードです。
ちなみにホワイトバランスも当然マニュアルで!
マニュアルモードでの撮影は相当肝心なので、映画のような映像を撮る為のシャッタースピードやフレームレートについてピンと来ない方は下記の記事を合わせてご覧下さい。
【重要】一眼レフでシネマティックな動画を撮影する為の設定
2021/2/26追記
*ブラックレベルを+12まで上げると淡くなりすぎるので+5〜+10程度で良いかと思います。
*彩度:-15→-5に修正
さて、この設定で撮影すると、なんだか眠たい雰囲気になると思います。
グレーがかっていて、若干黄ばんでいるようにも見えると思いますが、これがダイナミックレンジの広い映像で、色の情報は存在しているので後から調整できます。
なぜHLGなのかというと、この記事のテーマが「手っ取り早くシネマティックに」なので、白飛び黒つぶれしにくく、かつグレーディング出来るからです。
勿論S-Logを使う事で得られるメリットもありますが、それはまたそのうちということで、今回はHLGを使った設定で簡単にやってしまいます!
次はいよいよLUTの適応方法です。
シネマティックなLUTと言えば「M31」

そう、シネマティックな映像と言えば『ティール & オレンジ』というLookですね。
人物の肌のオレンジと、それを引き立たせる緑青色の背景を組み合わせる配色です。
そしてその色合いを実現する代表的なLUTが「M31」で、なんと無料で入手できますので、ダウンロード方法と使用方法を合わせてご紹介します。
追記:2021/4/19
パッケージ内容に変更があり、「M31」という名前のLUTは無くなりましたが、その代わり「Teal and Orange.cube」など、他にも有名な映画のカラーをシミュレーションしたLUTが沢山増えました★
無料LUTのダウンロード方法
❶ Colorgradingcentral.comにアクセスします。
❷ 「DOWNLOAD」をクリックします。

❸ Facebook messengerかメールアドレスの登録が必要となりますので、任意の情報を登録します。
今回はメールアドレスで進みますので、名前とメールアドレスを入力し、使っているソフトウェアにチェックを入れます。


❹ メールが届きますので、「Download LUTS Here」をクリックします。
その他のリンクは無視して頂いて結構です。

❺ リンク先の「DOWNLOAD ZIP」をクリックするとファイルのDLが開始しますので、任意の場所に保管します。

これでLUTのダウンロードは完了です!
なんとREC709への変換LUTなども合わせて70種類入ってます!
LUTの適応方法 (Premiere Proの場合)
❶ Premiere Proのタイムライン状のフッテージを選択し、Lumetriカラーを立ち上げます。
❷ 「クリエイティブ」タブを選択し、一番上の「Look」をクリックし、「参照」を選択します。

❸ ダウンロードしたフォルダ内から任意のLUTを選択します。
*画像では「M31」を選択しておりますが、現在パッケージ内容は変更されております。
M31に似た効果を出すLUTは「Teal and Orange.cube」となります。

❹ Look(LUT)が適応されます!

❺ あとはお好みで適応する強さを調整します。

これで完了です!!
撮った素材によってはしっくりこないこともあるかと思いますが、その時は他のパラメータを触って理想に近づけます。
それでも上手くいかない場合は、撮影時のホワイトバランスや露出などが原因と考えられますので、別の素材で試してみましょう。
LUTとLookの違い
LUTと言うのはそもそも撮影時の設定に合わせて「目的のカラースペースに変換する」事を目的に開発されたカーブで、作業工程としては最初に当てて色を正しい状態(普通の状態)にするものです。(Log to Rec709)
なので前述したようにHLGは元々放送用のガンマカーブなので専用のLUTというのがあまり見当たりません。
それに対してLookとは、好みの色に近づける為のプロファイルです。
そして今回ご紹介したM31は独自の色補正が適応されたファイルなので、実際にフォルダ名に「Look」と書かれている通り、厳密に言うとLUTでは無いんですね。
なのでPremiere ProのLumetriカラーで使用する際に「基本設定」ではなく「クリエイティブ」の項目から呼び出し、調整を必要とするわけです。
でもそのフローは間違ってはおらず、目的に対して1つのLookが色を持ち上げる役割と、好みの色にすることの両方を兼ね備えていると考えて貰えば解りやすいと思います。
まとめ
どうでしたか?
理想のカラーに近づけましたでしょうか?
簡単な方法で、手っ取り早くシネマティックな動画にする方法の解説でした。
今回はHLGを使った設定をご紹介しましたが、S-Logを使う際も考え方は同じで、大切なのは「後で色の調整がはまりやすくする為のカメラの設定」が大事と言うことと、LUTとLookの意味合いや使い方を覚えておくことで、バリエーションが増えると言うことです。
ダウンロードしたフォルダ内に「Mad Max.cube」「Matrix V1.cube」など面白いLookもありますので、是非他のパターンも試してみて下さい!
そしてカラーグレーディングを本気で学んでみたいという方には、こちらの書籍をお勧めします。
分厚くて内容も難しいですが、世界中のカラリストの教科書となる書籍です。
映像制作を楽しみましょう^^
ではまた!
★こちらの記事も合わせてご覧下さい!
»SONY:S-Logの基礎知識【撮影設定の選び方からLUT適応まで】
その他の参考書籍はこちら!