ジンバルの使い方は、その人の映像センスを露骨に表します。
特に最近のモデルは便利すぎるゆえに双刃でもあるので、間違った使い方をしないよう注意が必要です。
正直、最近の製品はあれこれ機能が多くて、使いこなさなきゃいけない感が凄いです。。
しかし、それらを駆使した撮影機会が何回あるのか?
それよりもスタンダードなショットを撮る機会の方が断然多いはずですよね!
そこで、この記事では、見失いがちな「そもそもジンバルの目的とは?」という基本的な観点で、本来のジンバルの良さを存分に発揮する為の使い方について触れていきます。
皆さんがどんな映像を撮りたいのか、ぼんやり思い描いている部分が明確になってくると思いますので、是非参考にして下さい!
NG例から考えるジンバルの正しい使い方
まずは、どういったジンバルの使い方がNGなのかを5つピックアップし、基本的な考えに基づいた対処法をご紹介ます。
そして正しくジンバルと付き合っていく為の考え方についてもご紹介いたします!
5つのNGパターン
- 直線的な動きのブレ
単純な縦横の動きですが、慢心してブレている映像を多くみます。
レンズの焦点距離が短い方がブレにくいで、スムーズな絵になり易いですが、いずれにしても「パン」をロックするなどして、制御することが好ましいです。 - その場でパン
その場での自由過ぎるパンニングは、素人っぽさを感じさせます。
できればワンショット内の動きは統一する方が作品の質は上がります。 - 動きが早過ぎる
アクティブさを表現する意外は、ゆっくり動かすのが鉄則です。
「滑らかな動き」による没入感を得たいのであれば、スピード感はそれを邪魔する要素となります。 - やたらスピン(回転/ヒネリ)させる
Dji RS2などに搭載されているジンバルのスピン機能を使って、やたら回転させる映像を時々見かけますが、やめておいた方が良いです。
「天地」がひっくり返るような映像は普通に見ると気持ち悪いので、それなりの芸術的な意図が無ければ成立しません。
逆に「天地」が無い(又は曖昧)なアングルであれば成立し易いです。
例えば、空や、真上から見下ろしたアングルなど。 - 電動的な制御感が伝わるショット
最近のジンバルはモーターパワーが強くて頼もしいのですが、その反面モーターに頼り切った無機質な映像になり易い傾向があります。
動きながらの構図修正は簡単ではありませんが、力任せに行わず、いかに人間的に動かすかで映像の質感が大きく変わります。
正しいジンバルとの付き合いかた
ジンバルの目的って、ブレの無い映像を撮る為ですよね。
もし、それ以外の機能や拡張性に着目して導入を検討しているのであれば一度立ち止まって下さい。
そもそもジンバルに求められる仕事は、移動しながらの撮影をブレを無くサポートすることで有り、ほとんどの場合それを人間がオペレーションします。
ジンバルはあくまでも補助なので、誰が使っても同じクオリティが出るというわけでは無く、それを扱う人間の技術によって、良くも悪くもなります。
映像の撮影はカメラやジンバルがやってくれるのではなく、人間がやるのだという考え方を強く持つ必要があります。
特殊な機能はほとんど使わない
何でも一つの機材で出来れば便利に感じるかもしれませんが、お手持ちの機材を見渡してみて下さい。
実際よく使う機材って、その為だけにあるというものが多く無いですか?
得意な所がハッキリしていて、そこが一番輝いているという機材とは長く付き合う事になります。
逆に、あれもこれも出来る機材は影が薄いというか、主な機能以外は使わなかったりするので、ハッキリ言ってその機材である必要が無いわけです。
「出来ることなら手持ち撮影が良い」という出発地点
手持ちのガタつきを無くす為に、”機械式”のスタビライザーが使われるようになり、その後2010年過ぎから”電動式”のジンバルが使われるようになりました。
しかし、電動モーター式だと表現できない有機的なショットを撮る為に、今でも振り子でバランスを取る機械式のスタビライザーは多くの撮影現場で使われています。
スムーズ過ぎる映像や、キビキビカメラを振り回す映像は、そのショット単体で見ると確かに凄いですが、作品の中では逆に偽物っぽさを醸し出します。
なぜなら、視聴者が入り込める映像の特徴は、自然で気付かせないところにあり、過度な滑らかさは逆に質感を損ないかねません。一回気になり出したら視聴者はそればっかり気になってしまい、作品に入り込めなくなるわけです。
映画などで、素早くパンを振る時って大体が人物目線で、そういったシーンは大抵スリリングな場面だったりします。そしてこれも同じく、一つの作品内で何度も使われることは無いですし、その一回の高速パンはジンバルである必要が無いというか、逆に手持ちの方が臨場感出そうじゃないですか?
撮影の大半は地味な動きである
ジンバルの話をしているのにこんな話をするのはあれなんですが、美しい映像を撮りたければ、ほとんど動かないのがベストです。
最初にお伝えしたように、ジンバルはあくまでも撮影の補助をする道具ですから、必要じゃない場面で動き回ることは避けましょう。
不必要な動きは視聴者にストレスを与えます。
もし、じっくり動くのであれば5秒間に20cmぐらいの移動をイメージして下さい。
それでも動き過ぎかもしれません。
動きのある絵を撮る時であっても必要最低限の動きで、しかもカメラの向きをキョロキョロさせずに停止ポイントまで無駄なく運ぶ必要があります。
余計な動きが命取りになるという話ですが、そもそもこれはジンバルの話というより、カメラマンとしての話かもしれませんね。
ちなみに、長い距離を高速で移動しながら撮影する方が軌道が安定して見えるので楽なのに対して、短い距離をゆっくり撮影するのって「迷い」みたいなものが手に出やすいので結構難しいと思っています。
ジンバルと付き合う上での考え方をご紹介しました。
ジンバルを使わない選択もある
極端な話ですが、撮影内容によっては無理にジンバルを使う必要が無かったりします。
10年前にその機材は存在しなかった
昔の映画などを見ていて思うのが、「当時の機材でよくこれほどの作品作れたよな」に尽きるのですが、工夫しながら欲しいショットを実現していただけなんですよね。
「この機材を使ってどんな画を撮ろうか?」ではなく「このシーンはこう撮りたい」というのが先にあって、それを実現する過程でカメラをアシストする機材が浮かび上がってくる。
機材に振り回されることなく映像の本質を捉えて撮影に臨みたいものですね。
色んな作品を見て欲しい
今まで何気なく見てきた作品を改めて見返して見てください。
さすがプロだな~と思っていた作品も良く見ると結構ガタついてたりするもんです。
しかしなぜ気にならなかったのか?
そこが重要なポイントです。
そもそも映像とは作品の内容を表現するメディアの1つであって、技や性能を披露する場ではないんですね。
見る人を作品に引き込む事に注力しておりますので、気が逸れるような要素は徹底的に排除しています。
なので、ジンバルのスムーズさにかまけて不必要に動く事や、機材の性能をこれ見よがしに披露する事なんてあり得ないわけです。
まとめ
発展途中の技術に対して、保守的な意見が多くなってしまいましたが
ジンバルは間違いなく必要な機材です。これは断言しておきます!
そしてジンバル撮影の本分を忘れてはいけないというお話でした。
色々試してみたい方は、どんどん試して欲しいですが
スタンダードなショットを安定して撮れる技術は並行して身につけておくべきなので、地味で退屈かもしれませんが練習に取り入れてみて下さい!
機材はあくまでもカメラマンである自分の拡張パーツに過ぎないんだなということを実感できると思います。
クライアントから要望で妥協せざるを得ない場合もあるでしょうが
ご自身の作品を作られるのであれば、是非参考にして見てください。
では!
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