
動画撮影の際に、自分以外のカメラマンがどんなホワイトバランスの合わせ方をしているのか、少し気になったりしませんか?
と言うのは、そもそもホワイトバランスって正しければそれで問題ないのですが、撮影内容によってはコロコロ変えなくてはいけないこともありますし、そんな余裕がないシチュエーションだってあります。
はたして皆はどんな時に、どんな設定方法を用いているのか?
ということで、今回は僕や僕の周りのビデオグラファーが実際に活用している方法の中から幾つかご紹介できればと思います!
この辺りの話って、基本に忠実であることは大事なのですが、何が最も大事かは、現場によって変わることがあるので、柔軟な判断が必要となります。
もしホワイトバランスの基礎知識が曖昧と言う場合は、先にこちらの記事をご覧下さい。
»動画撮影のホワイトバランスを理解する【状況に応じた対処法】
僕は普段MVや商品/店舗のPR映像などを撮影しておりますが、これらは「LIVE」ではないので、割としっかり作り込む余裕があるのですが、それ以外のドキュメンタリーやVlogなどでは、やはり設定の仕方が違いますので、そのあたりを詳しくお話しできればと思います。
ではいってみましょう!
動画撮影時のホワイトバランス設定&選び方

既にご存知の方は多いと思いますが、動画撮影においてのホワイトバランスは基本的に固定で、理由は写真と違って時間軸が存在する為です。
途中で色がコロコロ変わると、編集時に複雑な調整が必要になるので、それを防ぐ為に固定が推奨されます。
ただ、AWB(オートホワイトバランス)も完全に使わないわけではないので、そのことについても触れたいと思います。
ホワイトバランス を合わせる際に選択する主な設定は以下の4つです。
他にも色々選べますが、正直これだけで事足ります。
・マニュアル(手動)
・カスタムホワイトバランス
・太陽光
・オートホワイトバランス(AWB)
では、それぞれが向いているシチュエーションと、そのメリットについて解説いたします。
マニュアル(手動)
一番使う頻度が多いのがマニュアルホワイトバランス で、基本これで調整可能ならそれでOKというスタンスですね。
その理由は、目で見た色を再現しやすいという点と、屋外でのわずかな色の変化に即対応できるからです。
白を真っ白に撮る必要がない場合、例えば白い服にオレンジの光が当たっている時などは、カメラよりも、自分の方が正しく判断できるので、マニュアルが便利です。
あと、編集時にどっちに色を転がすのか決まっている場合などは、撮る段階で完成形に寄せておく方が素材の劣化を防げますので、割と積極的に変えます。
特に真逆に転がさなければいけない場合(たまにある)などは絶対マニュアルですね!
マニュアルホワイトバランスが活躍するシチュエーションは以下の通りです。
- 色温度の変わりやすい環境
- カメラを複数台使う場合
カスタムホワイトバランス
室内で照明を立てて撮影する場合は、色温度が安定している為、カスタムホワイトバランスを使う事が多いです。
カメラにもよりますが、グリーンとマゼンタの微妙なシフトも修正できるので撮影段階で追い込むには打って付けです。
使用する判断基準としては、色温度が変化しにくい環境且つ、忠実な色再現が求められるケースです。
「全部忠実じゃなきゃダメなんじゃないの?」って思われるかもしれませんが、半分はその通りです。
残りの半分は、マニュアルホワイトバランスの項でもお伝えしたように、白を白にしない場合もありますので、日の出と夕刻では使い難かったりします。
日が沈み切った夜の街中などでは、安定した人工光が沢山ありますから有効ですね。
カスタムホワイトバランスが活躍するシチュエーションは以下の通りです。
- 屋内の商品撮影
- 光源が安定しており色温度の変化が無い環境
- 被写体に色被りが多い時
太陽光
大体どのメーカーも「太陽光」又は「晴天」が選べるようになっていますが、要はプリセットなので、マニュアルで5200K(ケルビン)に合わせるのと同じです。
だったらなぜ「太陽光」を使うのか?という話ですが、一番大きな理由は手間を減らす為です。
例えば、同時刻に2つのシチュエーションでそれぞれ違う色温度を設定して撮影する必要がある場合、どちらかが太陽光が当てはまる条件ならマニュアルの値を変えずに太陽光に切り替えるだけで良いですし、その後設定を戻す時も楽で、迷いやミスも減ります。

え~と…ここは5200ケルビンで~あれ?5400やったかな?

なんか5800Kの方が良い気がしてきたけど、今変えたらまずいかな?どうしようかな?
特にスピード勝負の現場では、ホワイトバランスの他にも色々考えながら撮影をしていますので、少しでも簡略化するというのは重要になってきます。
かと言って全部プリセットを使うわけでもなく、あえて太陽光だけプリセットを使う理由としては、太陽光が他のプリセットと比べて該当する条件がシンプルで、結果に誤差が少ないからです。
「太陽光」が活躍するシチュエーションは以下の通りです。
- 日光が安定している時間帯/環境
- マニュアル操作で値の変更が多く、負担を軽減させたい場合(条件が当てはまれば)
オートホワイトバランス(AWB)
冒頭で、「動画におけるホワイトバランスの基本は固定」とお伝えしましたが、そうもいかず、オートホワイトバランスを使うケースがあります。
「作品」の撮影ではなく「記録」の撮影に多いのですが、長時間カメラを回しっぱなしで色温度が頻繁に変わるシチュエーションでの撮影です。
例えば以下のような撮影があります。
・結婚披露宴
・ドキュメンタリー
結婚披露宴の場合、屋内の暖色の照明環境からいきなりカーテンが開いて太陽光になったり、キャンドルだけになったり、とにかく目まぐるしいです。
ドキュメンタリーの場合、屋内から屋外に出たり、明かりが蛍光灯だったり、晴れたり曇ったり、もう手が付けられません。
こういったやり直しが効かないケースでは、撮れてさえいれば編集で何とか出来る可能性があるので、とにかくカメラを止めずに撮り続けることを最優先に考えてオートホワイトバランス(AWB)を選びます。
ウェディング関係は、慣れている方や、専業でされている方なら”感”が働くと思うのでAWB以外で撮影されるかもしれませんが、「知り合いの結婚式で撮影頼まれたんだけど〜」の場合はオートホワイトバランス に限ります!
最近の一眼レフ/ミラーレスは撮影しながら設定を変更できるものもありますが、それを自分でやるのか機械に任せるかの違いです。
ちなみに上記のケースでは露出もオートにする事が多いですね!
オートホワイトバランスが活躍するシチュエーションは以下の通りです。
- 色温度がよく変わる(読めない)長時間撮影
- 絶対に撮り逃し出来ない場合
* 一点補足ですが、ライブハウスの場合は、上記には該当しますがマニュアルやカスタムで問題ありません。
ステージ上の照明が出せる色は決まってますので、白(系)の照明の時に忠実に撮影できるよう設定しておけば基本的にそれ以降変更は不要です。
よく使う4つの設定方法でした!
ホワイトバランス設定の注意点

カメラの性能が良くなっても、人為的なミスがあってはどうしようもありません。。。
ここでは、カメラの性能に便りきって失敗しないよう2つの注意点を挙げさせて頂きます。
・グレーカードの使い方に注意
・RAW撮影での調整
グレーカード使い方に注意
カスタムホワイトバランスを使うときに利用するのがグレーカードですが、グレーカードには色が薄めの50%グレー(ライトグレー)と、色が濃い18%グレー(ミドルグレー)があり、ホワイトバランスを合わせる際は、色が薄めの50%グレーを使います。
色が濃い18%グレーは露出を調整する為にあるものなので、間違って使うと正確なホワイトバランスを得る事が出来ませんので注意しましょう!
(それ以前にカメラによってはエラーになります)
ちなみに50%グレーカードを使ってホワイトバランスを合わせると、グレーが白になるということではありません。
反射率50%〜90%のカードなどを使ってホワイトバランスを合わせた場合と結果は同じになるはずです。
ただし、90%以上の反射率を持つ物体は露出によってホワイトバランスを合わせにくいこともありますので、結局、確実にサンプリングできる50%グレーが良いと言うことです!
RAW撮影での調整
RAWで動画を撮影するメリットは、後で自在に色を調整できるところですよね!
なので、RAW撮影時はそこまで慎重にホワイトバランスを合わせる必要がないという事になるのですが、それでもホワイトバランスを合わせる習慣は付けておいた方が良いです。
理由はこの2点です。
- 習慣化する事で、状況から設定を導く力を養える
- 正確なモニタリング環境での撮影は、その場で問題を発見出来る可能性が高い
例えば、規模の大きな撮影の場合だと確認用にREC709環境のモニターを用意するでしょうから、ホワイトバランスの設定を省略することは無いと思います。
しかし、逆に小規模で撮影を行っている場合は、確認作業が少ない分色々と省略しすぎて重大な問題を見逃してしまう可能性が潜んでいますので要注意です。
まとめ

ということで、シチュエーション別に、どのようなホワイトバランスの設定や選び方をしているのかを解説させて頂きました。
基本はマニュアルホワイトバランスが多いですが、撮影条件、撮影内容、優先内容によって変わることもあるので「何でもかんでもカスタムホワイトバランスで!」という感じでは決して無いことをお伝えしました。
業界や人によって異なることもあるかと思いますが、僕の考え方としては、❶カメラが認識出来ない事を人が補い、❷人故に起きるミスを最小限に抑える。
という2つの間で取捨選択しているといった感じですね。
まだまだ修行が足りないので、もしかすると鍛錬次第で次の次元が見えてくるのかもしれませんが、今のところはこういうやり方がお勧めですよ!
というお話でした。
是非試してみて下さい^^
ではまた!