S-Log3の場合ベースISOが640(α7sⅢ)っていう話は聞いた事あるけど
それ以下に設定すると何か問題が発生するのかな?
出来ればノイズを減らしたいから、限界まで下げたいんだけど…
そんな疑問にお答えします。
Log撮影の場合はベースISOが割と高い数値ですから、どうしてもノイズの不安が付き纏います。
この記事では、そもそもベースISOとは何なのか?守らないとどうなるのか?を解説させて頂きます。
そもそもベースISOとは?
ベースISOとはカメラメーカーが各ピクチャープロファイル毎に決めたISO値のことを指し、その設定時に一番ダイナミックレンジを確保できるとされています。
Base ISOは、イメージセンサーのラチチュードが最大になるISO感度、つまりセンサーからの出力信号が不必要にゲインアップされないISO感度に設定されています。カメラのイメージセンサーの性能を最大限に活かせるISO感度です。
例えば、Base ISOで最大15ストップのラチチュードを持つイメージセンサーから15ストップの信号が出力されているとき、ISO感度を上げる(ゲインアップする)とハイライト側の情報がラチチュードに収まらないため記録できなくなります。
Log撮影を行う場合は、ラチチュードをできるだけ大きくするためにBase ISOで撮影する必要があります。
SONY クリエイターズヘルプガイド
ラチチュードとダイナミックレンジ
ダイナミックレンジがデジタルカメラセンサーの性能指標であるのに対し、フィルムではこの概念を「ラチチュード」と言います
言葉は違えど、一番暗い部分と一番明るい部分の範囲を示す規格という点では同義です。
「撮影できる明るさの範囲」については、カメラが認識できる明るさの段階がどれだけあるかのかを示す為に「EV」「段」「ストップ」という表現を使いますが、これらは全て同じ意味で、数値が大きいと「ダイナミックレンジが広い」とされます。
例えばSONY α7sⅢは15ストップ(メーカー発表)とされています。
Log別に指定されたベースISO
Rec.709での撮影では選択出来る最低値がベースISOに該当しますが、Log撮影においては指定されたベースISO以下も選択出来ることが多く、それらは「拡張ISO(感度)」と呼ばれます。
ちなみに拡張ISOとは緊急措置的に使うISO値の事を指すので、一般的には高い数値を思い浮かべがちですが、ベース以下も同じ扱いという事です。
同じプロファイルでもカメラによって変わります。
以下は代表的なプロファイルのベースISOです。
- Canon EOS R5
・C-Log:ISO400
・C-Log3:ISO800 - Panasonic DC S1H
・V-Log:ISO640(低感度側) / ISO4000(高感度側)*
*デュアルネイティブISO - SONY α7sⅢ
・S-Log2:ISO640(低感度側) / ISO12800(高感度側)*
・S-Log3:ISO640(低感度側) / ISO12800(高感度側)*
・HLG3:ISO100(低感度側) / ISO2000(高感度側)*
*非公式デュアルネイティブISO
SONYの場合はベースを下回るISOでは、値の上下にバーが表示されますので一眼でわかります!
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ベースISO以下に設定するとどうなるのか?
やっぱり気になるのはベースISO以下で撮った場合のリスクだと思います。
写真の感覚で考えると、ISOは下げれるなら下げたほうが良いという考え方ですが、動画のLog撮影においては考え方が異なるので注意が必要です。
まずは上の動画のヒストグラムに注目して再生してみて下さい。
S-Log3(ベースISO 640)で行ったテストです。
*テスト結果を解りやすくする為にシャッタースピードと露出は有り得ない数値になってますので無視して下さい。
ダイナミックレンジが狭くなる
結論から言うと、ベースISO以下に設定した場合、ハイライト側のダイナミックレンジが狭くなります。
S-Log3の場合はビデオ出力レベルが最大94%になりますので、ヒストグラムが完全に右端に届く事はありません。
なので、テスト開始時と終了時のISO640というSONYが指定するベースISOの時に最大のダイナミックレンジが得られる状態になっており、テストでは完全に白飛びしている状態に見えますが、ほんの少しだけ余裕が残っているのが見て解ります。
しかし、ISOを、500/400/320/250/200/160と下げるとハイライトがピーク(完全に白飛び状態)になり、160まで下げてもピークの状態は変わらずピークの天井だけが低くなっていきます。
ハイライトのダイナミックレンジが狭くなると言うのはこう言う事です。
と言う事で、特別な理由がない限りベースISO以下で撮影する事はお勧めできません。
が、ユーザーが選択出来るようになっている理由は何故か?
それは、撮影環境によって有効な働きをする場合があるからです。
例えば極端な暗所撮影で、ハイライトがピークに達しない状況や、ラン&ガンの記録撮影などで、クオリティを削る場合の判断順序が異なる場合です。
いずれも稀な状況ですが、我々が使用するカメラは全員が同じ使い方をするわけではないので、考え方も色々と言う事です。
動画と写真のベースISO
以前読者様から「写真の場合はどうなのか?」とご質問を頂いたのですが
回答としては、カメラメーカーが定めるベースISOが写真撮影時の話をしているのなら、そのISOで写真を撮る事で最大のダイナミックレンジを確保できます。
そしてISOを上げれば上げるほどダイナミックレンジは失われ、センサーへの負荷も大きくなる為ノイズが増えます。
但し写真のRAW撮影と動画のLog撮影ではそもそもカメラのポテンシャルを活かせる範囲が異なる為、RAW撮影ではヒストグラム上で白飛びしていても現像である程度戻せたりします。(写真の方が余裕がある)
次に動画の話です。
Log撮影を行う際の各プロファイル毎に指定されているベースISOは、カメラの機種によっても変わりますので「○-LogだからISOは〜」という考えは禁物です。
Logとはフィルムの特性を元に開発されたプロファイルで、主に明部と暗部のカーブ(残し方)に特徴があり、基本的にベースISOから動かさずに撮影する事が想定されています。
なので今回の検証結果からも解るように「低い方になら動かしても良いんじゃ無いの?」という発想に基づくISOの変更も効果がないどころか画質を下げる要因になるという事です。
この辺りの話は長年写真をやっておられる方程とっつきにくいかと思いますが、そういうものとして理解して頂くのが早いです。
まとめ
ベースISO以下に設定できてしまうけれど、使って良いのかどうか?という疑問に対しては、ハイライトのダイナミックレンジが失われる為、お勧めできないという結論です。
そもそもベースISOは、メーカーが各プロファイル毎に最適な値としてチューニングしておりますので、設定値が前後することによって失われる要素があるという事を忘れないようにしたいですね。
今回の話ならそれがハイライトのダイナミックレンジとなります。
カメラによっては値が異なる場合がありますので、メーカーサイトから正しい情報を入手し、お手元で試してみて下さい!
それではまた!
正しい露出を得るにはカラーチェッカーが1つあると便利です!
また、F値を変えずに減光するにはNDフィルターが必須です!
それぞれ僕が普段使っているアイテムですが、間違いなく手放せないアイテムです^^