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動画や写真で被写体が太って見える理由と対策【カメラマン向け】

投稿日:2021-02-07 更新日:

動画や写真で太って見える理由と対策


写真だけに限らず動画を撮影するビデオグラファーの皆さんも、撮った写真や映像をモデルに見せた時「なんか太って見える…」って言われたことありませんか?
“綺麗に撮ってあげよう!”と思って撮影しているのにモデルさんがショックを受けているのを見ると申し訳ない気持ちになりますよね。

また、この記事を読んでおられる方の中には撮られる側の方もいらっしゃると思うのですが、「高そうなカメラで撮って貰ってるんだし、もしかするとこれがリアルなのかも…」と気を落とされたご経験があるのではないでしょうか?


実はこの現象、撮影全般において昔から言われていることで、気のせいではなく現実に起きている問題として捉える必要があります。


この記事では、被写体が太って見える理由を多角的に解説し、その対策についてお話ししていきます。
全体を通してカメラマン向けの内容ではありますが、撮られる側の方も是非参考にして下さい!

これまで腑に落ちなかった謎が解けて、やるべきことが見えてくるはずです!




動画や写真で太って見える理由

動画や写真で太って見える理由と対策

動画や写真で太って見える理由の結論からお伝えすると

人間の目で見た通りにカメラで撮影する事は不可能です。

まずは、この事実を受け入れる必要があります。


人は3次元の物体であり、カメラのイメージセンサーなど平らな2次元平面に投影すると正確に捉えることができません。

球体である地球の地図を紙などの平らな面に描いたりしようとすると、比率を歪めずに描くことができないのと同じです。
メルカトル図法でロシアや南極が大きく見え過ぎているというのは有名な話ですよね!



生でモデルや芸能人を見た時に、テレビで見るよりも細く見えるのはそういう事で、彼ら彼女らはもともとビックリするぐらい細いのにテレビや雑誌で見る場合「普通」のサイズになっているわけです。

安室ちゃんメッチャ顔ちっちゃーい!!


確かにそうかもしれないと納得できる反面、太って映る場合とそうでもない場合があるのはどういう原理だ?と疑問が浮かびますよね。

それを知るには、まずレンズの特性をしっかり理解しなくてはなりません。




レンズの特性


上記の写真(GIF)は、レンズによって見え方がどう変わるかを実験したものです。
16mm、24mm、35mm、50mm、70mm、85mm、100mmで撮影したもので、レンズに合わせて撮影距離は異なりますが、同じ被写体をセンターに入れて撮影した場合の見え方の違いです。

これはただのゴミ箱ですが
もしモデルだったとしたら…

想像もしたくないですよね。

では、16mmなどの広角側と100mmなどの望遠側で、なぜこれほど違うのかを解説いたします。


広角レンズの特性

広角レンズは、その名の通り広範囲を写すことが出来る一方で、近いものをより近く写し、遠いものをより遠く写すという特性があり、もう少し簡単にまとめると「近いものは大きく、遠いものは小さくなる」ということです。
早速ややこしいですね!

身近な例えでいうと、スマホのカメラなどがそれに当たります。
自撮りの際に上から撮ると目が大きくアゴが小さくなり、頭の大きさに対して体は小さく(細く)なりますよね。
これは広角レンズの特性をうまく活用した撮影方法で、被写体とレンズの距離が近いほど効果は強くなります。

因みに広角レンズの場合、フレームの端に行けば行くほど引き伸ばされて太って見えるという現象がありますが、それはレンズディストーション(歪み)なので、また別の問題となります。


望遠レンズの特性

遠くのものを近くに写します。
当然ですが、望遠鏡って遠くのものを近くに見せるものですし、改めて考えると当たり前ですよね。
下の画像を見ると、16mmで撮影時には見えなかった被写体の側面(遠い面)が、100mmではハッキリ写っており、レンズに一番近い面との距離が小さくなっております。

もし人の顔なら、鼻の頭と耳の距離が縮まって、より平面に近づいたということになります。
これを圧縮効果と呼び、実は被写体を太らせる原因はこれなのです。

動画や写真で太って見える理由と対策

焦点距離を長くすると、被写体の特徴が平らになります。
これは通常、被写体の寸法をより正確に表したものですが、人の場合「太った」ように見えます。

どう考えても正しく写っているのは右側なのですが、実際の見た目よりは太く見えます。
生でゴミ箱のサイズをお見せできないのが残念ですが、一眼のカメラと、二眼の人間の差ということで理解して頂ければと思います。

ポイントは「正確に写すこと=実際の見た目ではない」ということです。




被写体(モデル)だけが「太って見える」と感じる場合

機械の仕組みの話はちょっと置いといて、モデルだけが「太って見える」と感じる場合があります。
大半の人は鏡で自分を見ることに慣れている為に起こりやすい錯覚で、いわゆる「脳内補正」が原因となります。

補正にも2種類ありまして、まず脳は無意識のうちに自分が見ているものを都合の良い形に変えるという特性があるのと、願望があろうと無かろうと人が立体を見る時には脳内で「補完」が行われており平面である写真とは見え方が違っているのです。
結果、本人のイメージする自分とリアルに差があるというのはよくあることです。

そんなこと言ったら元も子もないと思われるかもしれませんが、ここで重要なのは人が何かを見る時に上記の特性を持っているという事実で、作品をより良くする為にもカメラマンやモデルはその事実から目を背けず、意見を交えながら撮影に取り組むことで互いに納得のいく作品に近付けます。




カメラマンから見ても「太って見える」と思う場合

これは困った話ですが、僕も実際経験しております。
撮影した自分ですら「これはちょっとやばいぞ」となる場合、根本原因はこの問題への理解がが甘過ぎるからです。

撮影時の自分を振り返ってみて下さい。

そのショットを撮る時に、何を考えていたかを自問してみればすぐに理解できると思いますが、おそらく「瞳にフォーカスが合っているか?」「露出オーバーしてないか?」「構図はおかしくないだろうか」などでしょう。
ここで「被写体の魅力をどうやって引き出そう」という思考にどれぐらい脳内メモリーを割いていたでしょうか?

「正確に写すこと=実際の見た目ではない」と前項でお伝えしましたが、カメラの設定に全力を注いでいるだけだと、被写体の本来あるべき姿やレンズの癖を考慮した撮り方というのを忘れがちになるので注意が必要です。


ここからは実際の「予防措置」についてご紹介していきます。





写真で太ってしまう現象の予防措置(対策)

動画や写真で太って見える理由と対策


写真で太ってしまう事実を取り除くことはできませんが、予防措置と準備を行うことで最小限の影響に留めることができます。


レンズ選びと、被写体との距離のコントロール

レンズ選びと撮影距離の選択は重要です。
広角側には「レンズディストーション」が待ち構えており、望遠側には「圧縮効果」が待ち構えている為です。

その中でも被写体の歪みが出来るだけ少ないものという基準で考えるなら、100mm前後のレンズが理想です。但し被写体との距離感はとても重要で、画の切り取りに気持ちが向き過ぎてジリジリ近寄りがちなので、一歩下がるよう心がけた方が結果的に良くなることが多いです。

逆に気を付けたいのは、50mm近辺の標準域レンズでの接写です。
広角で接写すると歪みが酷いことはすぐにわかると思いますが、標準域でも近付きすぎると歪みますので、気づきにくさでいうと標準域の方が危なかったりします。

レンズ選びも大事ですが、距離感はもっと大事です



光の使い方

フォトグラフィー、ビデオグラフィーの行き着くところは「光」です。
これを使いこなす為には熟練が求められますので、まずは何となくでも知っておく必要があります。
光は様々な演出目的で利用されますが、大前提として人の目は暗いところより明るいところに反応しやすいという事です。
そして世の中の多くの作品でこの性質が利用され、影の作り方で実際の被写体とは違うように見せることに成功しています。

動画や写真で太って見える理由と対策

具体的な例でいうと、正面からの光は被写体の立体感を無くし平たく見せる効果がありますが、映画などでよく使われる半逆光はカメラに近い面に影を作る為、より立体的に見せるという特徴があります。

関連記事
»3点照明を使って動画のクオリティを上げる【ライティングの基本】




ポージングと撮る角度

プロのモデルがとても細く見える理由の1つは、ポーズの仕方を知っていることです。
彼ら彼女らは、動画や写真で太ることを知っていますから、それを補う為の知識を持ち合わせています。

僕がこの話を聞いて最初に思ったのは「そういう予備知識的なことじゃなくてカメラマンに必要な知識が欲しいんだよな~」という感じだったのですが、その考えは間違っていました。

これはカメラマンに絶対必要な知識です。

上手いモデルを撮影するとその大切さがよくわかるのですが、自分の腕が上がった気になるんですよね笑、恥ずかしい話ですが。

ラインの出し方や、動き方、座り方、手の使い方、これらは全てレンズに向けたアプローチであって、カメラの角度に応じて短所をうまく隠したりするのも技のうちで、結果的に太って見えないことを実現できているのです。

ただ、被写体全てがプロのモデル並みに写り方を知っているかというと、そうではない事が多いと思いますので、写真でも動画でも、カメラマンが瞬時にアドバイスできるようにしておく必要はあるということです。
立ち方一つで激変します!

その他にもメイクの仕方や衣装の選び方など挙げ出すと色々出てきますが、上記の3点を意識して取り組むだけで太って見える現象は削減出来ます。

それぞれの具体的な取り組み方については専門書を参考にして頂ければと思います。
ビデオグラファーでもスチール撮影用の書籍は参考になりますよ!




まとめ

動画や写真で太って見える理由と対策

何か魔法の解決策があるのではと期待されていたとしたら、大変申し訳ないのですが、これがリアルということで受け入れて貰うしかないのです。

我々は「何か良い手があるはずだ!」と言って特効薬を探しがちですが、こういった話は大抵の場合、長年の経験と蓄積された知識がベースになり直感的に現場で生かされるものなので、結局のところ急がば回れということになります。

しかし、もしこの問題で漠然と悩んでいたのなら、それを整理する為の良い機会になれば嬉しいです。

人の目と比べた時、カメラやレンズは完璧ではない事を受け入れ、その上で適切な予防措置(対策)を行う事で「太って見える」は最小化されます。

レンズのチョイス、被写体との距離、屋外で光を読む技術や、効果的な照明を組み上げる技術などは、成功パターンや失敗パターンの蓄積によって厚みを増すものだと思いますので、とにかく学び、実践するしか上達の道は無いと思っています。
僕自身もまだまだ未熟ですので、日々試行錯誤しています!

最後に一つ、自分の使っている機材でMAX太って見える撮影方法を探すのは非常に良い練習になりますし、その最大値が出た時の条件で太って見えない撮影の練習をする事は、この問題への理解を深めると思いますよ!

是非一度試してみて下さい!

それではまた!

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Shinpei Nakamura

ビデオグラファー / 映像クリエイター / 映像ディレクター として活動しており、建築・広告・MV などの映像制作を行なっています。
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