撮影した動画のノイズが酷くて、カメラの買い換えを検討する際、やはりSONY α7sⅢが候補に上がってくるのではないでしょうか?
2020年秋に発売され、大反響を生んだこのカメラですが、多くのビデオグラファーが愛用している理由の一つとして、1画素あたりの面積を大きくすることで光を多く取り込める構造は暗所撮影に強く、他のカメラと比べてISOを上げてもノイズが出にくいという点が挙げられますが、はたしてその話を鵜呑みにして良いのか??実際のところどうなのか気になりますよね。
またS-Logの撮影では、露出を+2(ETTR)で撮影することでノイズが少なくなるという情報を耳にされたこともあるかもしれませんが、4:2:2 10bitで撮影できるα7sⅢでもその方法をとるべきなのか?
常にビデオグラファーを悩ませ続けるノイズ。
この記事では、ノイズ発生を左右する「ISO」と「露出」の2つを同時に検証しましたので、α7sⅢの導入で悩まれている方は、ぜひ検討材料にして頂ければと思います。
僕自身が、1年間使い込んでみて結論に至った部分なども交えて解説させて頂きます。
α7sⅢのISO別ノイズ量を検証!【10bitでも露出オーバーで撮るべきか?】
最初に簡単なおさらいです。
❶まず、ISOとはカメラ内部で露出を調整する機能で、暗い場所でも数値を上げることにより明るく撮影できるのですが、その分ノイズが発生します。
なので、撮影の際は出来るだけISOに頼らないようにするのですが、そうも言っていられない環境もあるかと思いますので、α7sⅢならどこまで許容できるのか?
そこが一つ目の疑問ですね。
❷次に、露出についてです。
S-Logで撮影する際はノイズが出やすい(目立ちやすい)ものです。
それをいかに対処するかということで、一般的なテクニックとして露出をオーバー気味(+2.0程度)で撮影する事が好ましいとされています。
しかし、その分ハイライトの余裕も犠牲にしておりますので、出来れば適正露出で撮影に望みたいところです。
でも上記の話は8bit収録を前提とした内容で、α7sⅢでは10bit撮影が可能なので関係ないのでは??という疑問。
この2つについての検証となります。
検証内容と設定の詳細
カメラの設定は以下の通りとなります。
- ピクチャープロファイル:PP8
- ガンマ:S-Log3
- カラーモード:S-Gamut3.cine
- その他の詳細設定:初期状態
- 記録方式:50M 4:2:2 10bit
- シャッタースピード:1/50
- F値:ISOに合わせて調整
【露出】0、+1.0、+2.0 の3種類
【ISO】640~32000の18段階
撮影したショットの黄色い枠内(400%拡大)部分を比較します。
なお、比較しやすくする為に、明るさやコントラストは調整しております。
ではどうぞ!
いかがでしょうか?
拡大しているとは言え、綺麗さっぱりノイズが無くなるはずはないですよね。
ISOの許容範囲
結論、640〜3200、12800〜25600が 綺麗に撮影できる許容範囲と言えるでしょう。
特筆すべき点としては、ISO12800(動画のちょうど1分の辺り)で突然ノイズが無くなるという現象ですが、これはSONY非公式ですが「デュアルネイティブISO」という技術(またはそれと同じ効果をもたらす技術)で、低感度側のISOから高感度側のISOに切り替わる事で、ノイズ量の上昇がリセットされる仕組みです。
リセットという表現はあくまでもイメージ上の話ですが、実際にISO12800ではノイズの量がISO640の時と変わらない程になります。
勿論それ以上ISOを上げるにつれノイズは再び増え始めますので、最終的に許容できるギリギリのラインはISO25600と考えています。
これらを整理すると、ISOの優先順位は以下のようになります。
640 → 800 → 1000 → 1250 → 1600 → 12800 → 2000 → 2500
→ 16000 → 3200 → 4000 → 20000 → 5000 → 25600
適正な露出
一目瞭然ですが、露出+2.0の結果が一番優れていました。
10bitでも露出オーバー気味の撮影が有効という点は変わらないということです。
Gerald Undoneによると、厳密には+1.66が好ましいので、画面上では+1.7を目安にすることをお勧めします。
ただし、夕方の撮影などで、空のグラデーション(ハイライト)が優先で被写体は影になって構わないという条件なら、露出を0に合わせた方が良い場合も有りますので、その辺りは臨機応変に使い分けると良いです。
ちなみに、+2.0が点滅する状態で撮影すると、それはもう+3.0なのかもしれませんので大変危険です。
不必要に露出を上げすぎた場合、暗部の情報が残らず、後でコントラストを締めても回復出来ない事があるので要注意です。
何でも明るめに撮っておけば良いというのは大間違いですね。
下の動画は、露出+2.0で撮影したクリップの全体像です。
これを見る限り、まだ行けそうな気がしますよね!
実際のところ動画の用途によってはISO51200ぐらいまで突っ込んでも差し支えなかったりしますが、出来るだけ編集時にノイズリダクションを使いたくないという場合は、もう少し手前で止めておく必要があります。
ただ、僕が使っていて思う事は、暗い場所って満遍なく暗い事があまりなくて、暗いからには当然何かしらの発光体(備え付けの照明など)があるんですよね。
折角の光を全部飛ばして暗部に露出を合わせるという事は中々無いので、大体はISO1600で足りないならISO12800~ISO16000まで上げて事足りるといったところです。
(逆にNDフィルターで減光することもあります)
さいごに
α7sⅢでのS-Log撮影について、まず、絶対的なノイズ量は抑えられておりますが、露出不足だとその恩恵にあやかれないという点が挙げられます。
またISOを中途半端な値に設定せず、低感度のベースISO640と、高感度側のベースISO12800を基準にして上手に使い分ける必要があるという事が挙げられます。
この2点を意識する事で、α7sⅢはノイズの悩みをかなり軽減してくれるカメラだと言えます。
注意したいのは、ISOをマイルール内に抑えることばかり気にして、全く露出が稼げてないというパターンがよく有り、その場合一見セーフティーなISO値であってもノイズが沢山乗ってしまうということになります。
例えば「低感度ISO3200〜10000と高感度20000以上は絶対使わない!」という考えのもと、ISO2500の露出-1で撮影して、結果ノイズまみれというケースです。
それならISO20000で露出+2.0で撮影しておいた方がまだ断然綺麗だったはずということになります。
(この場合ISO1250程度のノイズ量)
この辺りの思考の癖というのは中々変えられないのですが、ハードの進化に沿って我々のソフトもアップデートし続けるしかないということですね!
結論α7sⅢは、少し癖があるけれど、付き合い方さえ板につけば素晴らしいパートナーとなる事は間違いありません。
今回はISOやノイズに限ったお話でしたが、それだけでも十分な価値があります。
ノイズ処理で編集ソフトが重くなって大変という方にはお勧めです^^
それではまた!
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