
何故多くのクリエイターはMacを使っているのか?
なんとなく「デザイナーとか、そっち系の人達に使いやすい設計だからじゃないかな?」って感じはするんだけど、いまひとつ理由がハッキリしない。
でもいざ自分が新しく買うとなると、その辺の理由は理解しておきたいですよね。
カッコ良いからとか、操作が直感的だからとか、そういうアバウトな話じゃなくて、根拠を知りたいですよね。
その疑問にお答えします。
ちなみに僕は2004年からMacと共に時代を渡り歩いて来ましたので、歴史的な背景も交えて解説したいと思います。
Macが動画編集者に支持される理由

venturebeat.com
Macのグローバルマーケットシェアは、10%ぐらいです。
そしてプロフェッショナルクリエイター(ビデオ編集者、写真編集者、デザイナー、脚本家、作家など)の中でのシェアは高く、先進国では50%を超えていると言われています。
その情報だけ聞くと確かにクリエイターがMacを選ぶ割合が高いと感じますが、この統計はあくまでもプロの現場の声で、そこには一般ユーザーが含まれておらず、ちょっと曖昧です。
しかしここではMacを選ぶプロのクリエイターが沢山存在する事実と、その理由がプロならではの明確なものであるという点にフォーカスしたいと思います。
理由① 一貫した信頼性
理由② ’80年代後半のDTP業界の影響
理由③ 映像業界におけるFinal Cut ProとProRes(プロレズ)の定着
この記事を書いている僕は普段ミュージックビデオの撮影や編集を行っておりまして、この辺りの話はやっぱりお客さんからもよく訊かれますので、主観を交えずに事実に基づいたお話をしようと思います。
理由① 一貫した信頼性

古今東西、業務で採用される機械には信頼性が求められます。コンピューター(パソコン)も例外ではありません
ご存知の方も多いかと思いますが、Windows PCの場合はマイクロソフトがOSを開発しており、PC本体(ハードウェア)は複数の会社が作っています。対照的にMacにはMacOSという専用のOSが存在します。当たり前のこと過ぎて何が凄いのか解りにくいかもしれませんが、Macの為だけに開発された専用OSがあることで、Windowsよりも遥かに少ないシステムサポートしか必要としません。
結果メンテナンスの必要性が少なく、その価値をより長く保ちます。
マシーンにトラブルがあった時、ハードウェアとOSのサポートが別の会社というだけでややこしくなるのは目に見えてますよね。
当然業務にかかる時間もコストとして考えますので、4~5年使用することを考えるとMacの方が値は張るが安定している為、プロの現場で採用されるわけです。
でも同じ予算で4~5年という事ならWindowsを選んで定期的に高性能なパーツにカスタマイズするという選択肢があるかもしてません。確かにそれもアリです。ただ、そのアップデートで得られる恩恵と背中合わせのリスクなども考慮した上での判断としてMacに軍配が上がる事が多いという事ですね。
プロの現場では、ずば抜けた性能よりも一貫した信頼性が求められるのです。
理由② ’80年代後半のDTP業界の影響

30年以上昔の話になります。
当時、Adobe systemsが開発したPostScript技術によってデザイン/印刷業界は大きな変革の時代を迎えており、デザイナーはプリンターとの格闘から解放され、本来やるべきクリエイティブな作業に時間を割けるようになりはじめたと言われています。
そしてその時代、図形や文字の入力は全てプログラム入力するのが当たり前だったのですが、Macintosh OSのビットマップ概念は線も文字も図形として扱い、画面上に直接図形が描けるという事で多くのデザイナーに喜ばれ、更に今までは印刷してみないとわからなかった色もシュミレートできるようになったことでMacでのDTPというのが強く根付いたわけです。
おそらく「直感的な操作」とか「色の再現性」という言葉はこの頃の話でしょう。勿論今もAppleがそこを重視している事は事実ですが、この話が受け継がれている事は間違いないでしょう。
また、Adobe systemsが開発したIllustrator(’87年)、Photoshop(’89年)は、当時Macintosh OSのみに対応しており、Windows版がリリースされるのは’93年~’97年にかけてなので、それまでのデザイン業界がMacを採用していた割合なんて簡単に想像できるでしょう。
そして、10年以上に渡ってMacに多額の投資をしてきた企業が突然Windowsにシフトするわけがなく、それどころか’98年に爆誕したiMac(スケルトンモデル)のフレンドリーなデザインが脚光を浴び、一般のクリエイターを含む幅広い層に受け入れられるようになります。
それ以降もAppleがiTunesやiPod、iPhoneを立て続けにリリースし、常に注目を集めている事は事実ですが、「なぜデザイナーがMacを選ぶのか」という歴史的な背景は、90年代までの歴史が全てを握っていると言えるでしょう。
そのイメージが今もずっと残っているという事です。
理由③ 映像業界におけるFinal Cut ProとProRes(プロレズ)の定着

Final Cut Pro
言わずと知れたMacOS専用のプロフェッショナル向け映像編集アプリケーションです。その一部の機能を使えるのがMacに付属する無料アプリiMovieとなります。
Apple 公式:Final Cut Pro X
ProRes(プロレズ)
ProResとは、Appleが開発した映像コーデックのことで、ほとんど劣化がなく放送レベルの映像をMacでも編集できるデータなので、映像業界で高い普及率を誇ります。
Apple公式:Apple ProRes について
1999年にリリースされたFinal Cut Proは、放送業界のオフライン編集で使われている事が多く、そのシェアは大きくMac用Adobe Premiere Proの開発がストップする程のものでした。2011年にリリースされたFinal Cut Pro XではUI(ユーザーインターフェース)が一新され、その他にも色々問題があった事で多くのユーザーが離れたものの、それでもFinal Cut Proを使い続ける現場は数多くあります。
その理由がProResに大きく関係しているのです。ProResというコーデックの素晴らしさは上記で説明した通りなのですが、もっと具体的に説明すると、非圧縮の映像データなのにファイルのサイズが小さく、レンダリング(書き出し)を繰り返しても劣化しない特徴があります。放送業界の事情としてはストレージの確保、処理スピードはコストを左右する大きな課題ですので当然ProResに依存します。そして、なんとこの形式で書き出し出来るのはMacに限定されていたのです。2018年頃からはWindowsでも書き出しに対応し始めたようですが、ほんのつい最近まではMacでしか作業できない状態だったわけです。
一人で全部こなすクリエイターと違って、プロの現場では自分だけが違うやり方で作るというのが難しいようで、伝統的なプロセスを守った結果、Macが採用されている。正しくはFinal Cut ProとProResが採用され続けているというわけです。
ただし、これは一部の放送業界に限った話なので、「動画編集者に支持されている」とは言いにくいところです。
しかし口コミや情報を探す時に”プロの意見”を参考にする以上、この類の情報に出くわす機会がおのずと多くなるという事は理解しておく必要があります。
GPUとは?動画編集に適したMacの選び方【意外な落とし穴に注意!】
まとめ

Macが動画編集者に支持される理由を3つ挙げさせて頂きました。
共通して言えるのは、好きとか嫌いじゃなくて最終的にコストのかからないものを選択している。というところですね。
プロゆえに華やかさよりも実務的なところにフォーカスしているという事です。
「何故多くのクリエイターはMacを使っているのか?」の謎は解けましたか?
今回はMacが動画編集者に支持される理由について歴史的な背景を交えて説明させて頂きました。
ちなみに僕は今、iMacをメインマシンとして使っていますが
今後4K/6K/8Kの編集を視野に入れ、Windowsの導入も積極的に検討しております。