一眼レフや、ミラーレス一眼を使ったシネマティックな動画撮影がブームですが、そもそも我々は、何を持ってシネマティックと感じているのか?
高解像度で色が綺麗ならそうなのか?
はたまた上下にレターボックス(黒い帯)があればそうなのか?
当然それだけじゃないですよね。
この記事では、シネマティックさを構成する要素を5つに分けて紹介します。
具体的なポイントを把握することで、今までなんとなく”良い雰囲気の映像”と捉えていた作品がなぜ引きつけられるのか、その根拠を得ることができ、自身の作品づくりにも生かして頂けると思います。
初心者の方でもすぐに実行出来る内容となっております。
なお、最近ではシネマティックな撮影=シネマティックVlogと捉えがちな傾向がありますが、本記事ではVlogの撮影手法や編集テクニックと切り離して、あくまでも「映画っぽさ=シネマティック 」にフォーカスして解説していきたいと思います。
シネマティックな動画を撮影する為の5つの要素
LogやRAW撮影が民生機で行える今の時代、カラーグレーディングで作品の雰囲気を向上させること自体は手軽に行えるようになってきました。
単に色を整えるだけにとどまらず、作品のテーマに沿った色のチョイスや、シーン毎の調整、これらの効果を存分に得る為にも正しい撮影方法が求められますが、シネマティックさを表現する上ではそれ以上に意識して取り組むべき5つの要素があります。
カメラの設定に関してはこちらの記事をご覧下さい。
【重要】 一眼レフでシネマティックな動画を撮影する為の設定
では早速まいります!
24fpsで撮影する
映画のフレームレートは24fpsです。
テレビ番組や、一般的なビデオ撮影、スマートフォンのデフォルトのフレームレートは30fpsで、フレームレートが高くなるにつれ現実っぽさが増し、いかにも「ビデオ」な雰囲気になります。
60fpsや120fpsで撮影する場合もありますが、それはあくまで後で24fpsに変換してスローモーションにすることが前提ですので、そのまま使うことはありません。
フレームレートを高くすることで、より美しい映像になると勘違いされがちですが、実際はその逆なので、ここは徹底しましょう。
被写界深度のコントロール
背景のボケ感は映画っぽさの特徴として重要です。
特に単焦点レンズを使ったシャープでボケ味を生かした被写界深度の浅いショットは、大きなアクションがなくても見入ってしまう美しさです。
日中はNDフィルターを使うことで、被写界深度を浅く保つことが出来るので、ほぼ必須です。
しかしやり過ぎは注意です。
被写体以外全部ぼかすのは意外と簡単なので安易に行いがちなんですが、必要なのはどこから先をぼかすかをコントロールできる技術です。
映画をよく見てみると、被写界深度の深いショットが多く見られますが、ごちゃごちゃした印象もなく自然に見ることが出来ます。
これは光と陰のコントロールや、カメラワークによる視線誘導が働いている為、見せたいものに集中しやすくなっているわけです。
レンズに頼らない演出もあるということは覚えておきましょう。
カメラの存在を意識させない
ストーリーを引き立てるカメラワークを実現するには、カメラを自分のコントロール下に置くことが重要になってきますので、それを実現する為にはジンバルやスライダーが必要です。
なぜそこまで安定感を求めるかというと、単純な話ですが、視聴者が作品に集中する為にはカメラの存在に気付かせないことが重要で、その為スムーズな映像が求められます。
一方スムーズ過ぎて生っぽさがない場合、元の素材がスムーズに取れているのなら、後から編集で揺れを追加することもできます。
ジンバル
ジンバルにはいろんな機能があるので、ついついアクロバットな撮り方をしてしまいがちですが、シネマティックを目指すのであれば、基本はゆっくり動くことを意識しましょう。
ゆっくり動くとリッチな画になりますし、カメラの主張が最小限なので存在を意識させません。
一方揺れないからといってブンブン振り回した映像は、ダイナミックでカッコ良いかもしれませんが、安っぽく見えがちです。
もしかするとこの段階で、読者の皆さんが何を目指そうとしているのかがハッキリしてくるのかもしれませんね。
先ほど、ブンブン振り回した映像が安っぽいと言いましたが、これはあくまでも映画的な撮影方法の観点からの話で、もし旅のVlogをドラマティックに仕上げたいのであれば「躍動感」が必要になりますので、そういった動きは逆に重宝するはずです。
スライダー
ジンバルだけではなく、シーンに応じてスライダーの活用を強くお勧めします。
映画の撮影現場でドリーショットが有効なのと同じで、ジンバルには無い安定した軌道は、見る者に安心感すら与えてくれます。
持ち運びや設置が面倒というデメリットはありますが、撮影対象に合わせてチョイスできると作品の質がグッと上がります。
構図
構図は重要です。
被写界深度の項でも少し説明しましたが、シーンを印象付ける上で重要な役割があります。
心理学的な側面もあるのですが、視聴者に何を見せたいのかをコントロールする為の手法の1つとなります。
特に3種類のブロッキング「スペース」「シェイプ」「ライン」はとても重要です。
下記の動画が参考になります。
ワンパターンになりがちな構図も、あらかじめ意図を明確にしておく事で、より一層インパクトのあるシーンに変えることができます。
構図とは少し違いますが、撮影対象のディティールやテクスチャ(質感)を表現できるショットがあれば、更により良くなります!
構図に関する書籍はこの2冊が参考になります。
ライティング
照明はシネマティックな映像を撮る上で最も重要です。
普段我々が見ている物や景色の良し悪しって、大半が造形そのものではなく照明効果によって判断されています。
何も考えずに写真や動画を撮ってて「これメッチャ綺麗に撮れてる!」てなる場合、それは運良く光の条件が整っているからです。
これを意図的に出来なければいけないのですが、例えば富士山の撮影でいうと、「紅富士」も「ダイヤモンド富士」も太陽による光の演出ですし、2月は曇りの日が多くて綺麗に撮れないという話もありますが、これも光の問題です。
ここで勉強になるのが、どの季節の、どの時間帯に、どの位置から、どんな写真や動画を撮影出来るのか皆解っており、目的の為に正しい行動を取っているという点です。
当たり前に聞こえる話かもしれませんが、これが解ってないと、自然光で狙い通りの作品を撮れません。
ちなみに、映画では順光で撮影することが少なく、多くの場合手前に影ができるように照明を当てていることが多いです。
もちろんバックライトを仕込んで人物や物の輪郭をしっかり出すよう工夫が施されています。
照明は絶大な効果があり、面白いですが、すごく大変なのも確かです。
ただ、しつこいですが、作品の見た目の良し悪しはほぼ照明で決まりますので、常に意識の中心に置いておきましょう。
定常光の基本的な照明方法はこちらの記事をご覧下さい。
3点照明を理解して動画のクオリティを上げる【スマホ撮影でも効果有り】
まとめ
今回は撮影方法に焦点を当てて説明させて頂く為、カラーグレーディングなどの編集には触れませんでしたが、個人的な経験から言うと、良い素材が撮れてないとカラーグレーディングがうまくいかず、無駄に迷宮入りしてしまいます。
なので編集で色をつけてそれっぽくなったという次元ではなく、根拠を持って撮影に挑み、質の高い素材に対して、最終的な味付けとしてカラーグレーディングを行うという基本プロセスを重視した作品作りをお勧めします。
料理は素材が命と言われるように、映像制作も同じく素材が大事です。
素材が良ければ編集で短くするのが勿体なく感じる事も多くあります。
みなさんの環境に合わせて試せそうなところからやってみて下さい!
ではまた!