皆さんは、ホワイトバランスに関してどれくらい正しい知識を持っていますか?
撮影時に適正な色にする為という解釈で概ね間違いないですが、基礎知識と状況に応じた対応方法を知っていることで作品のレベルを大きく左右することも確かです。
この記事では、ホワイトバランスに関する基本的な知識から、一歩踏み込んだコントロール方法まで解説しますので、今までぼんやりと理解していた部分が明確になると思います。
僕は普段MV制作を企画から撮影、編集まで通して受ける事が多いのですが、稀に編集だけ依頼される事があり、頂く撮影データの中にはホワイトバランスが適正では無いものも多くあります。
編集で補正はできますが、当然素材に負担がかかりノイズの原因になったりしますので、最初から適正に撮るに越した事ありません。
動画撮影のホワイトバランス基本設定
一人でやってる分には困りませんが、チームで撮影に取り組む場合お互いが正しい認識を持ってないと、事故の原因になります。
ホワイトバランスとは
ホワイトバランスとは、撮影環境での光の色の影響を補正して、白を白く映すための機能です。
「撮影環境での光の色」とは白熱灯の明かりや、蛍光灯の明かり、はたまた太陽光という事もありますね。それぞれの環境下で白は白じゃなくなる為、それを補正してちゃんと白にしてあげるという事です。
ここまでは大体の方がご存知かと思います。
続いて色温度の説明をします。
色温度とは
ホワイトバランスを理解するには、色温度を理解することが重要です。
光源が異なれば、光の色も異なります。人間の目は優れている為、白い紙切れが赤く照らされていたとしても「白い紙切れ」と認識する事ができます。しかしカメラは見たままの情報でしか判断できません。
例えば太陽光は実際には青ですし、タングステンは黄色ですから、カメラはそのまま認識します。
それぞれの光源がどのあたりに分布するか見て見ましょう。
単位は「K=ケルビン」と言います。
太陽光(デイライト)なら5600K
タングステンなら3200K
キャンドルの火は2000K
といったように大体は決まっています。
ただ、光源の性質によっては強さで数値が上下しますので決めてかかるのは危険ですね。
次は、「色温度」に関する情報を会話でやり取りする際の表現についてです。
ここが曖昧だと、指示を受けた側が混乱しますのでしっかり覚えておきましょう。
まず色温度の「高い/低い」についてですが
・色温度が高い=「涼しい」青色の光
・色温度が低い=「暖かく」、より明るい光
となります。
温度を表現する場合「高い=赤い」というイメージがありますが、
色温度に関しては「高い=青い」と表現しますのでここは間違えないようにしましょう!
では色温度を「上げる」という表現をどう解釈するか?
目的は「青くする」ということになりますよね。ということは今の色温度が「低すぎる=赤すぎる」からということがイメージできます。では実際にカメラのダイヤルを回して調整しますが、ここがややこしいポイントです。カメラ上ではケルビンの数値を下げることで色温度が上がります。
何言ってるのか意味不明ですよね、混乱を解消するためには分けて考える必要があります。
- まず、色温度の概念。
これは上記の表で示した通り色温度が高くなれば青くなる。ここはカメラの事を一回忘れ、科学の話だと思って理解しましょう。
- 次にカメラの性質の話。
カメラではケルビンの数値を低くする事で色温度が高くなります。逆という理解の仕方もありますが、最初にお伝えしたようにカメラはそもそも被写体が何色なのかを知りません。もし知っていたなら操作方法は「逆」にならないのですが、そこは深掘りせずこのまま受け入れましょう。
ごちゃごちゃになりがちですが、意識的に分けて考えると良いです。
なので色温度を「上げる」という表現の正解は
「ケルビンの数値を高くする=色温度を上げる」という解釈で良いのですが
カメラの設定は「ケルビンの数値を下げる」ということになります。
指示をくれた相手の認識が不安だと「もう少し暖かくしたい」って意味で言ってるのかな??と深読みしてしまう事もあるかもしれません。
色温度の表現は統一できているか、お互いに認識の擦り合わせをする事も大事ですね。
まぁそもそも複数台で撮影する際は「ここ3800Kで!!みんな設定OK?」みたいな感じで決まると思うので、参考までに。
具体的な調整
一般的にカメラでコントロールできる範囲は2500K~10000Kの間ぐらいで、プリセットは使わずマニュアルで調整します。ドキュメンタリーなどで動き回る場合は「AWB」を使う事もありますが、これは特例というか、撮影の目的が映りよりも内容に振り切られますので、取り逃すわけにはいかない場合に使う事があるぐらいです。
マニュアルでの調整は基本的に「白を白く」という方向性で行うのですが、必ずしもそうなるわけではありません。温かさや冷たさなど、表現したいテーマによっても変わってきます。
例えば、夕暮れ時に西日の入る部屋で早朝のシーンを撮影するとしましょう。部屋の中はかなりオレンジがかっていると思いますので、恐らくカメラの設定は3200Kぐらいにします。赤みがほんのり残っているので夕方のシーンなのであれば編集で持ち上げやすかったりもしますが、今回は早朝のシーンです。編集で更に色温度を上げる(青くする)事は目に見えていますので、ちょっと青に寄せすぎたかな?というぐらいのところまで突っ込んでおいた方が素材へのダメージも和らぎます。
なのでこの場合2500K~2800Kぐらいに設定して撮影する事もあります。
状況に応じた対処法
面倒くさいことばっかりですが
ちゃんと対処しないと、後でもっと面倒くさくなります。
光源が複数ある場合
上記の画像のように、屋内の照明がタングステン(3200K)なのに窓の外は太陽光(5600K)というシチュエーションはよくあることです。この場合屋内の照明に合わせてでホワイトバランスを取ろうとすると窓から入る光はより強い青になります。この状態が望ましくないことは明確ですが、さて、その場合どのように対処すると良いでしょうか?
一番簡単な方法は、屋内の照明にカラーフィルター(Gel)を付ける事です。
CTBと呼ばれる青いカラーフィルターを通す事でタングステンの光の色温度が上がり、太陽光との差が埋まります。インテリア照明の白熱球などの色が混ざってしまう場合は、スイッチをOFFにしておくのが良いでしょう。
(アクセントとして利用する場合は、全体の色温度に影響が出ないよう工夫する必要があります)
逆に窓全体をCTOと呼ばれるオレンジ色のカラーフィルターで覆う事で太陽光の色温度を下げる事が出来ますので、屋内のタングステンに合わせてホワイトバランスを取る事も可能です。
しかしこれは大掛かりな作業になる為、前者の方法をとる事が多いです。
他にもカラーフィルターの種類はありますが、それぞれ目的によって用途が異なります。
複数の光源に悩まされていない場合でもカラーフィルターは有効です。
かさばるものではないのでワンセット持っておいて損はないアイテムだと思います。
ちなみに、最近販売されているLEDライトは光量も強く色温度を変えれるものが多いので、カラーフィルターが無くても大抵の撮影なら問題ないでしょう。
ただ、CTOとCTBに関しては意図的な効果を生み出す為にも有効なので、手札として置いておく事をお勧めします
ホワイトバランスを理解するには色温度の理解が必須であり
色温度を操るにはカメラの操作だけでは無く、光源に一手間加えるというお話でした。
編集時の事を考えると、色情報に偏りやバラツキが無いに越したことありませんので、ホワイトバランスはマストで理解しておきたい項目ですね!!
以上、動画撮影のホワイトバランスについての解説でした。
では!
(写真撮影においても考え方は同じです)