ビデオグラファーとシネマトグラファーの違いは何なのか?自分はいったい何者に該当するのか?したいのか?
そんな疑問にお答えします。
これから本腰を入れて映像制作をやっていこうと考えられている方なら一度はこの疑問にぶつかった事があるはずです。
正直呼び方なんて何でも良いという気持ちはあると思います。
しかし世の中の共通言語として基本的な分類の仕方や明確な違いは知っておかないと、言葉一つのせいで自分が何を目指したら良いのか翻弄されてしまうので、しっかり押さえておく必要があります。
かくいう僕自身も混乱した時期がありました。
そこでこの記事では、映像制作をされている皆さんが迷わずに目指す方向に向かえることを目的として進めていきます!
では早速始めていきましょう。
ビデオグラファーとシネマトグラファーの違い
ビデオグラファーとシネマトグラファーの違いを知る為には、ビデオグラフィとシネマトグラフィの違いを理解する必要があります。
ビデオグラフィとは、既に存在している被写体や状態を撮影することであり、フォトグラフィと同じくそれをいかに印象的に撮影するかなどは”ビデオグラファー”の技術やセンス次第となります。
それに対してシネマトグラフィとは計画された映像の制作であって、特定の目的を達成する為に各分野の人間が集まって映像制作を行うことを指します。
その中の撮影監督であるDirector of photograpy(DP)を”シネマトグラファー”と呼びます。
DP自身がカメラを廻すことはよくあることなので、ビデオグラファーと対でイメージしてしまう原因はそこかも知れません。
かなり大胆に分類しましたが、更に区別する為の下記の3つについて詳しく説明します。
- プリプロダクション(準備)が必要かどうか
- どこまでが仕事の範囲か
- 制作の規模によって変わる境界線
プリプロダクションが必要かどうか
プリプロダクションとは映像制作を行う上での準備のことを指します。
準備といっても多岐に渡るのですが、大まかにピックアップするなら、絵コンテの作成、芸術的アプローチの追求、ロケーションやキャスティングの段取り、機材の選定等が挙げられます。
これらが関係してくるのはシネマトグラファーとしての業務であり、映像作品を生み出す上では重要なポジションとなります。
ビデオグラファーの場合は機材の選定等は当然有るものの、基本的には既に目の前に存在しているものを撮影するのでプリプロダクションという概念はありません。
被写体へのアプローチやレンズのチョイスなど、瞬時に判断出来る能力は当然必要となりますが、その場での感覚的な撮影を公とする点はビデオグラフィーとシネマトグラフィーの大きな違いと言えます。
どこまでが仕事の範囲か
ビデオグラファーは大抵の場合一人で撮影から編集まで行いますが、シネマトグラファーはチームでの制作を基本としますので、編集は別の人間が行います。
かと言ってシネマトグラファーに編集の能力が要らないのかと言えば勿論そんなはずはなく、エディターやカラリストとの連携を行う上でソフトウェアやカラーサイエンスに関する知識は必要ですし、そもそも編集で何が出来るかわかっている人間でないとプランを練ることが出来ません。
制作の規模によって変わる境界線
シネマトグラファーはチームでの制作を基本とすると前述したばかりですが、制作予算によってはプリプロダクションに割ける時間もあまり無く、自身がカメラを廻す事は勿論、照明や音響、編集までこなす場合があります。
カメラを自ら回すことに関しては規模が大きくても有る話ですが、編集までこなすとなるとビデオグラファーとの境界線も曖昧な気がしますが、この場合は実際に共通の領域の業務と言えるでしょう。
ざっくりとですが下記の図のように纏められるものの、制作の規模によってはお互いがクロスする領域に位置することもあります。
例えばVlogはビデオグラファーの範囲なのですが、Youtuberが企業の広告として機能する為のVlogを撮影する場合、予算に合わせて適切なロケーションやキャスト、衣装、スケジューリング、商品の魅力を伝えるアイデア考案など様々な業務を行うことになります。
これはクライアントからCM制作依頼を受けている状態ですし、小規模なシネマトグラフィと考えて良いと言えます。
このように区別がつかないこともありますが、基本的な違いは何度も言うように「プリプロダクションが必要か」と言う点に尽きます。
映像の質感がシネマティックかどうかなどは”作風”の話なので、そこでは判断しません。
自分は何を目指せば良いのか?
ビデオグラファーを目指すのか、シネマトグラファーを目指すのか、違いが分かれば方向性も決まりそうなものですが、これがまた難しい。
どちらが優れているという話ではありませんが、映像制作に関してより多くの知識が必要になるのはシネマトグラファーであり、チームを引っ張る能力も必要です。
しかしビデオグラファーは「個」で創作を行うスタイルであるからこそ独自の感性に沿った表現が可能でもあります。
さて、ここで自分がどうしたいのかわからないという方は、自分が撮りたいのは「作り物」か「現実」かを考えてみて下さい。
撮りたいのは「作り物」か「現実」か
映像作品はフィクション・ノンフィクションと分類出来ますが、例え事実に基づいたノンフィクションのドラマであってもそれを役者が演じる時点で「作り物」と言えます。
これらは、視聴者に与えるべき印象とその先にどんな行動を促すかが明確なものであり、入念なプリプロダクションを経て撮影・編集される作品ですので、多くの場合複数の制作会社が協力しあって制作にあたります。
その中で撮影の責任を持つのがシネマトグラファーになります。
このように、この世に存在しない映像を作り出す事への情熱をお持ちであればシネマトグラファーを目指すべきです。
シネマトグラファーは大抵の場合映像制作会社に所属しますが、フリーでも成立はします。
但し、フリーの場合は案件の都度自らチームを編成するか、全部自分一人でやるかということになるので、制作できる規模はおのずと限られてきます。
対照的に「現実」を撮るのがビデオグラファーです。
ここで言う現実とは、作り物では無く実際に目の前に存在するものが撮影対照であるということです。
なのでそれを非現実的に撮るのかどうかというのはまた別の話となります。
フォトグラファーのタイプで考えると解りやすいかもしれませんが、それぞれ得意分野があり、例えば人物を印象的に撮れる、動物や自然を力強く撮れる、見慣れた風景をエモく撮れる、何を撮ってもエネルギッシュに表現できるなど色々ありますよね。
勿論何の個性も発揮せずに見たままを忠実にカメラに収めるという記録的な撮影もビデオグラファーとして必要な能力です。
自分の作風が世の中から認められれば「この人に撮って貰いたい!」というオファーが届くようになりますのでフリーでも成立しますし、ウェディング関係の会社などに属することもあります。
さて、どちらが自分に合っているか。
自分がどんな映像作品を作っていきたいのか。
なんとなく見えてきましたでしょうか?
最後に、職業として考える場合についてもお話しします。
職業としての選択
ビデオグラファーであれ、シネマトグラファーであれ、自分の作風を評価して貰える状態に行き着くことは簡単ではありません。
ビデオグラファーとして自身の表現を貫き続ける為にYoutubeやInstagramを活用する事は良い事ですが、それを仕事とする場合は売れるまでの収入源が確保できません。
対してシネマトグラファーを目指して制作会社に勤める場合、安定した給与を受け取る事は出来ますが、チームでの制作を理解する為にもまずはアシスタントとして制作に関わることとなり、当然やりたい事ばかり出来る環境ではありません。
この違いは前述したフォトグラファーの例とも共通しますし、その他の職業で言うとフリーのイラストレーターかデザイン事務所でイラストを描くのかという違いにも当てはまります。
また個人でシネマトグラファーを目指す場合は、制作スキル以外にも営業スキルや広告に対する知識・センスが求められますし、外注先との調整を含めて全体を管理できる力が必要です。
ただし、ゆくゆくは大規模な制作を行いたいと考えられている場合は映像制作会社でしっかり実務経験を積むのが安全です。
まとめ
ビデオグラファーとシネマトグラファーの違いについてでした。
今自分がやっていることや、この先どう有りたいのかについて何かしらの判断材料になれば幸いです。
ちなみに僕自身は便宜上ビデオグラファーと名乗ってはいますが、仕事によってはシネマトグラファーである場合も半分ぐらいあります。
単身で切り盛りする一番過酷なスタイルではありますが、身の丈を少しずつ伸ばしながら新しいチャレンジを行なっている日々です。
それと最後にとても大事な話です。
映像は何かしらの目的があって存在します。
特にシネマトグラフィにおいては「単に綺麗な映像を撮るのでは無く目的を達成する為の映像を生み出す」という考えが基盤となりますので、コピーライティングの知識も生きてきます。
独学で映像を制作される方にはセールスライティング・ハンドブックという書籍が本当にお勧めなのでご紹介しておきます。
広告代理店や、会社の広報、自営業者、広告作りに関わる全ての人達に有益な書籍です。
例えば下記のように4種類に分かれる広告を理解しているかどうかで映像の内容はガラッと変わるはずです。
・直接販売
・資料を請求させる
・商品の認知度を高める(刷り込み)
・イメージを確立する(ブランディング)
僕の場合は、クライアントにとって最良の選択をする為にこの本から色々学びました。
広告について興味をお持ちでしたら間違い無くお勧めします!
ビデオグラファーを目指すにしろ、シネマトグラファーを目指すにしろ、誰かの心に刺さる作品を生み出せる技術は必ず求められます。
是非自分に合ったスタイルで感性や技術を磨き続けて下さい^^
では!
関連記事
»再生される動画の企画方法と考え方【欲張ると必ず失敗します】
»Youtubeで使える動画構成の考え方【チェックリスト付き】